「受け取ってもらえなかったことも」…イチローさんのグラブ製作担当が語る徹底的こだわり

イチローさんのグラブ製作を担当してきたミズノテクニクスの岸本耕作さん(ミズノ提供)

米国野球殿堂入りを果たしたイチローさんは、バットやグラブなど道具への「こだわり」が人一倍強いことでも知られる。「イチローさんは(グラブとの)フィーリングを特に大事にされていた」。そう話すミズノテクニクスの岸本耕作さん(67)は、米大リーグ時代のイチローさんのグラブ製作を担当。イチローさんの長年の活躍を陰で支えてきた一人だ。

岸本さんは高校卒業後、ミズノテクニクス波賀工場(兵庫県宍粟市)で勤務。イチローさんをはじめ松井秀喜さん(元巨人、ヤンキースなど)、宮本慎也さん(元ヤクルト)ら大リーグやプロ野球選手を中心に年間約200人のグラブの製作・監修を担当してきた。その中でも、イチローさんとの思い出は、今も強烈に残っているという。

イチローさんに初めてグラブを渡したのは2006年9月ごろ。「6個のグラブを用意したが、1個も受け取ってもらえず、持ち帰ってきた」と振り返る。イチローさんがグラブで特にこだわったのが「軽さ」と「バランス」だったという。

一般的な外野用グラブ(硬式)の重量は600~700グラム。イチローさんの場合は530グラムとかなり軽量だった。さらに「バランスがいいグラブは、軽く感じる」というイチローさんの要望に応えるため、ミリ単位の調整など試行錯誤を何度も重ねた。初めてイチローさんからグラブを受け取ってもらったのは07年シーズン中盤だったという。

岸本さんは後進の育成にも尽力。これまでの功績がたたえられ、昨年は厚生労働省から「卓越した技能者(現代の名工)」に認定された。イチローさんの米国野球殿堂入りについて「同じ日本人として誇りに思う」と岸本さん。一流のアスリートの徹底したこだわりが、岸本さんにとっても卓越した技術を培う「原動力」になったのかもしれない。(浅野英介)

「超狭き門」を突破 ボンズ、クレメンスも果たせず

イチローさんがアジア人初の米野球殿堂入り

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *