切手デザイナーの貝淵純子さんが手がけた普通切手=東京都千代田区で2025年1月6日、小林努撮影
思いを込めて、したためた手紙。仕上げに切手を貼ったら、ちょっとだけ気分が高揚した――。そんな経験はないだろうか。「郵便料金を納めた証し」と言えばそれまでだが、切手の豊かな図柄には、選ぶ喜びも、集める楽しさもある。この小さな芸術品は、どうやって生まれるのか。
お年玉シート、縁起物尽くし
1月上旬、東京・大手町の日本郵便本社を訪ねた。取材に応じてくれたのは貝淵純子さん(64)。切手・葉書室に所属する8人の切手デザイナーの一人だ。20日に当選発表の2025年用お年玉付き年賀はがきで、3等賞品の「お年玉切手シート」をデザインした。
お年玉付き年賀はがきは1950年の正月用に49年から販売が始まった。華やかな年賀デザインの切手を小型シートにしたお年玉切手シートは当初からある賞品で、人気は根強い。
貝淵さんは2年連続で担当しており、古典柄の「束ね熨斗(のし)」だった24年に続き、25年も縁起物尽くしだ。長寿を象徴する亀甲をイメージした六角形の2種類で、110円は未来永劫(えいごう)の平穏を願う「青海波(せいがいは)」、85円は生命力や子孫繁栄を意味する「ねじ梅」をあしらった。「年間を通して使えるデザインにした」という。
1年がかりで発行
そもそも切手には、日常使いの普通切手とグリーティング用などの特殊切手がある。特殊切手には、特別行事などの記念切手も含まれる。
このうち普通切手は、郵便料金の改定時にデザインが一新される。特殊切手は毎年12月に翌年度の発行計画が公表され、25年度は31件が発行予定だ。記念切手は、例えば5月に発行予定の「気象業務150周年」などがあり、各省庁からの推薦をもとに有識者の意見も踏まえて採否を決める。
題材が決まると、デザイナーはテーマへの理解を深めるため資料収集や関係者への聞き取り、現地取材などを重ねる。動植物を扱う際などは専門家に監修を依頼する。制作開始から発行まで、おおむね1年はかかるという。
貝淵さんは24年夏の新紙幣発行に合わせた記念切手も担当した。その際、肖像の3偉人とゆかりある人々と膨大なやり取りをしたといい、「すごい量の候補を出して相談して。でも、完成品を見ると『なんでこんなに大変だったのかな』って毎回思います」と笑う。
「みんなの力で形に」
14年4月の消費税率8%への引き上げに伴い郵便料金が値上げされた際は、普通切手の全面刷新を担当した。代表作は今も販売されている2円切手だ。淡い紫色の背景に、薄いグレーと濃い紫色で描かれた写実的なエゾユキウサギが「かわいい」と話題になった。
切手をデザインする作業は、…