<井上尚弥計量>計量パスした井上(左)と金芸俊(撮影・島崎忠彦)
◇世界スーパーバンタム級4団体タイトルマッチ 統一王者 井上尚弥《12回戦》 WBO11位 キム・イェジュン(2025年1月24日 有明アリーナ) 前日計量が23日、横浜市内のホテルで行われ、世界スーパーバンタム級4団体統一王者の井上尚弥と、代役挑戦者でWBO同級11位・金芸俊(キム・イェジュン)はともにリミットを100グラム下回る55・2キロで一発パスした。興行が1カ月延期したものの、井上はプラス1カ月の調整期間でパワーアップ。転級5戦目で「スーパーバンタム完全体」に仕上がり、海外進出前哨戦で圧勝劇を見せつける。 本格的な海外進出を前に、井上が「スーパーバンタム完全体」になった。バキバキに割れた腹筋、盛り上がった上腕二頭筋を披露し、計量台の上でマッスルポーズをつくると「いよいよだなと。2カ月、長かったというのが率直な気持ち。待ち遠しい」と気合十分。フェースオフでは金芸俊と約13秒間にらみ合うと、自ら視線を外し決戦への集中を高めた。 異例の長期間にわたる減量だった。これまで約5週をかけて体重調整してきたが、昨年12月に予定されていた興行が1カ月延期となり、約10週かけてじっくりと体をつくり上げた。昨年9月のドヘニー戦前日計量後は声がかすれ、頬はかなりこけていたが、この日は万全そのもの。無理のない減量で体への負担を最小限に抑え「少しずつだが体もデカくなっている。スーパーバンタムの体も完成に近づいてきている」と仕上がりに自ら太鼓判を押した。 この日は4本のベルトに加え、米専門誌「ザ・リング」の認定ベルトを肩にかけてポーズを決めた。今秋には、同メディアを買収したサウジアラビア総合娯楽庁のトゥルキ・アラルシク長官の下、同国で防衛戦を行うことが濃厚。国営娯楽イベント「リヤド・シーズン」との契約後初戦へ「契約1戦目なので落とせない。気負いなく自分を信じてやるだけ」と世界を意識した完勝を見据える。 勝てば世界戦24連勝で歴代1位メイウェザーらの持つ26連勝にまた一歩近づく。さらにKO決着なら自身の持つ日本人最多世界戦連続KO勝利を「10」に更新。延期、相手変更を経ての待ちに待った一戦。海外進出前哨戦で完全体のモンスターが大暴れする。 《勝利オッズ1.02倍》戦前の予想では圧倒的大差がついた。英大手ブックメーカー・ウィリアムヒルのオッズは、23日時点で井上の勝利1.02倍に対し、金芸俊の勝利は15倍。1.02倍はKO勝ちした22年12月の元WBO世界バンタム級王者ポール・バトラー(英国)戦、昨年9月の元IBF世界スーパーバンタム級王者TJ・ドヘニー(アイルランド)戦と同様の高確率で、今回も井上の圧倒的優位を予想した。
《大橋会長問題続き「一番苦しかった」》興行をプロモートする大橋ジムの大橋会長は「今まで世界戦は約50試合やってきたが、ここまでくるのに一番苦しかった興行」と漏らした。当初の挑戦者、グッドマンは負傷で2度の“ドタキャン”。さらにセミファイナルに出場予定だったWBO世界バンタム級王者・武居由樹も練習中の負傷により防衛戦が中止となるなど、トラブルが続いた。中止の危機にひんしながらもこの日、出場選手10人が計量をパスし「ピンチはチャンス」と安堵(あんど)した。