第2話『その女、危険につき』ストーリー(2025年2月1日放送)|相続探偵

鬼頭の報告によれば、紗流は武三の他にも過去3回、身内となった者を亡くし、いずれも高額な保険支払金を手に入れていた。1回目は紗流が銀座でホステスとして働いていた24歳の時、15歳上の自営業者・田島(たじま)克己(かつみ)(山中良弘)と結婚。翌年に田島を亡くし、保険金5千万円を受け取った。その後すぐに年上の歯科医・中谷(なかたに)耕(こう)(岡崎克哉)と再婚。半年後に中谷を亡くし、保険金1億円と遺産5億円を手にした。死因はいずれも心筋梗塞で、検死結果、保険契約書ともに不審な点はナシ。ただ、3回目の相手となる青年・八木(やぎ)和也(かずや)(山川源太)だけは、なぜか結婚ではなく息子として養子縁組し、その1年後に和也はダンプによるひき逃げ事故で死亡、紗流に1億円の保険金が支払われた。ひき逃げの犯人は見つからないまま事件は迷宮入りしたらしい。

ともあれ和也以外は武三と全く同じ手口で保険金を手に入れていた紗流は、一体どうやって本人に保険契約書や遺言書を書かせ、殺していたのか?かつて紗流が勤めていた銀座のクラブのハルコママ(松岡依都美)いわく、紗流はホステス時代に看護師としても働いていたが、医療用麻薬を盗み出した疑いをかけられ、病院を辞めているらしい。本当に薬を盗んだかどうかは不明だが、薬に精通している紗流が毒物を手に入れることができれば、誰にも気付かれずに殺人を犯すことも可能なはず……。

“完璧な突然死”のほころびを見つけたい灰江たちは、潜入調査を開始。令子は家政婦に扮し、灰江と朝永は白アリ駆除業者を装って紗流の家に上がり込むと、部屋を掃除するふりをしてパソコンのデータを盗み、部屋の隅々に付着した汚れを採取。そんな中、リビングに飾られた大きな絵画に目を留める灰江。「これは……モネですか?」。印象派の画家モネの作品と寸分違わぬその絵は、実は紗流が描いたものだという。「絵に興味のない夫も驚いていたわ。贋作の画家になったら億万長者になれるねって」と切なそうな表情を見せる紗流。絵だけでなくモネのサインまで本物そっくりなことに驚く灰江は、さらにクローゼットの中から1冊のデッサン帳を発見。その中には、1人の青年の横顔や寝顔のデッサンと共に、紗流本人のサインも刻まれていて……。

事務所に戻った灰江たちは、紗流のパソコンの履歴からロシア語でのやりとりを発見。さらに、武三と紗流が結婚前に交換日記をしていたことも判明する。「なるほど、そういうことか!」。ついに紗流の尻尾をつかんだ灰江が、真琴に告げる――「もしかしたら、キミが受け取るべき遺産、すべて取り戻せるかもだ」――。

後妻業の手を緩めない紗流は、早くも5人目のターゲットとなる美容クリニック経営者・坂口(さかぐち)圭太(けいた)(青木伸輔)と結婚。このままでは坂口が殺されるのも時間の問題……灰江たちの不安は的中し、坂口は紗流が作ったスムージーを飲んだ直後に苦しみ始め、救急車で搬送された。隙を見て2人の新居に上がり込んだ令子と朝永は、部屋の中から坂口の遺言書を持ち出すと同時に、スムージーの残りを採取。ラボに持ち込んで検査機器にかけると、全てが判明する――。

紗流はやはり、元夫たちの保険契約書と遺言書を偽造していた。ハルコママの証言によれば、紗流はホステスを始めた頃、方言が強く会話が下手だったため、指名を取るために客と交換日記をしていたという。字がきれいだった紗流はそれで客の心をつかみ、さらに他の女の子たちに頼まれて客へのカードの代筆もしていたようだ。灰江が紗流を追い詰める――「あなたはおそらく、見たもの全てを画像として記憶にとどめることができ、その膨大なデータの蓄積から、簡単に他人の筆跡を真似できるようになった。交換日記のおかげで」――。今までの筆跡鑑定では見破れなかったが、紗流の家から持ち出した坂口の遺言書の筆跡と、これまで紗流が関わった保険契約書の原本の筆跡を朝永が改めて鑑定した結果、ほんのわずかな共通の癖を発見。「これは俺じゃなきゃ気付けない、もはや芸術だ」と自画自賛の朝永。とはいえ保険の契約は通常、本人が手続きしないと通らないが、鬼頭が保険会社を内部調査した結果、保険外交員の1人が契約欲しさに紗流に手を貸したことを白状した。

さらに灰江は、付き合いのある裏世界の高利貸・金山(かなやま)(渋川清彦)から手に入れた薬物を紗流に突きつける。それは、一定の時間がたつと自然に心臓麻痺を起こす海外製の毒薬。日本国内では出回っていないため、司法解剖では引っかからない、いわゆる『名もなき毒』だ。その毒と同じ成分が、坂口が飲んだスムージーから検出された。紗流はロシアのルートを使って手に入れた『名もなき毒』で、結婚相手を次々と殺していたのだ。ただ1人、デッサン帳に描いた青年・和也を除いては……。

画家になることを夢見ていた紗流は、美術評論家を目指していた和也と出会い、恋に落ちた。しかしその頃すでに裏組織にダマされて後妻業に手を染めていた紗流は、結婚した相手は必ず殺せと命令されていたため、和也との結婚をためらった。そして和也のためにも後妻業から足を洗おうとした紗流は、自分の身にもしものことがあった時には和也に遺産が入るよう、ひそかに養子縁組をしたのだ。しかし、そんな抜け道を裏組織が許すはずもなく、和也をダンプでひき殺した……。

真相を暴いた灰江は「事情はどうあれ、あなたを愛した男たちの命を奪った罪は、重い」と紗流を断罪。すると紗流は口元を緩め、「なんだか不思議……今わたし、少しホッとしちゃった」。やめたくても、逃げたくても、行き着くところまで行ってしまったらもう元には戻れず、走り続けるしかなかった、その苦しみからようやく解放される……。ずっと手放せずにいた和也のデッサンが、灰江に事件解決のヒントを与えてしまった……。「私の負けね。灰江七生さん、あなたともっと早く出会っていたら……」と涙を流し、静かにほほ笑む紗流。しかし、その笑顔にゾッとする灰江と令子。“もっと早く出会っていたら……”その続きは何を意味していたのか……。

被相続人を殺害して遺言書も偽造した紗流は相続権を喪失。大国生命に保険金を支払う義務はなく、武三の遺産は全額、唯一の相続人である真琴が相続することになった。家族を捨てた武三をずっと許せなかった真琴は「私や母にとって、良い父とはいえなかったけど……それでも、殺されるって……二度と文句も言えないところに行かされるって……そんなことって……」。今まで我慢していた涙がついにあふれ出してしまう真琴に、令子も「あっちゃいけないと、私も思う……」と、やるせない涙を流し……。

一方、事件解決を経て、ひとり風に吹かれる灰江のもとに、フリーの週刊誌記者・羽毛田(はげた)香(かおる)(三浦貴大)がすり寄って来る。「おかげさんで、後妻業のルポ、連載決まりましたわ。あんたも前みたいな汚いインチキやらかしてくれたら、また記事にしたってもええで」とニヤつく羽毛田。何も答えない灰江は、いつになく険しい表情で――。

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