【ニューヨーク=小林泰裕】米鉄鋼大手クリーブランド・クリフスのローレンソ・ゴンカルベス最高経営責任者(CEO)は13日、米ペンシルベニア州で開いた記者会見で、米同業のUSスチールの買収に意欲を示した。USスチールを巡っては、日本製鉄が買収を計画しているが、バイデン米大統領は国家安全保障上の懸念を理由に禁止命令を出している。
USスチールの工場=AP
ゴンカルベス氏は、「USスチールを買収したい。計画もある」と発言した。ただ、「USスチールが日鉄との経営統合を断念するまで、我々は何もできない」とも述べ、具体的な説明は避けた。
米CNBCは13日、クリフスが同業の米ニューコアと連携し、USスチールの全株式を1株30ドル台後半で取得する計画を検討していると報じた。実現すれば、米国の反トラスト法(独占禁止法)に抵触する可能性があり、USスチール傘下の製鉄所「ビッグリバースチール」をニューコアに売却する案が浮上しているという。
報じられた買収額は日鉄の提示額の1株55ドルを下回っている。実現のハードルは高いとみられるが、報道を受け、13日の米株式市場でUSスチールの株価は6%高となった。
USスチールは2023年8月にクリフスによる買収計画を拒否し、同年12月に日鉄が全株式を取得する買収計画に合意した。日鉄とUSスチールは今月6日、買収を違法に妨害したとしてクリフスとゴンカルベス氏、日鉄の買収計画に反対する全米鉄鋼労働組合(USW)の会長を提訴した。