「ザ・80年代!!SFタイムトラベルの金字塔。」バック・トゥ・ザ・フューチャー 緋里阿 純さんの映画レビュー(感想・評価) – 映画.com

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【金曜ロードショー新吹き替え版】にて。マーティ・マクフライ:宮野真守エメット・ブラウン博士(ドク):山寺宏一ジョージ・マクフライ:森川智之ロレイン:沢城みゆきスティーヴン・スピルバーグ製作総指揮、ロバート・ゼメキス監督によるタイムトラベルSFの金字塔。変人発明家ブラウン博士(通称:ドク)がデロリアン・DMC-12型を改造して発明したタイムマシンにより、30年前の世界にタイムスリップしてしまった主人公マーティは、過去のドクに協力を仰ぎつつ、自らが変えてしまった運命の歯車を戻すべく奔走する事になる。2007年、アメリカ国立フィルム登録簿に登録。恥ずかしながら、私はシリーズ初鑑賞。あまりにも有名な作品故、その後映画に限らずマンガ・アニメ等さまざまな作品でパロディ、オマージュされてきただけあって、本作の大筋も大体知ってしまっていたから。しかし、「原点にして頂点」とは、まさにこの作品の為にあるような言葉。序盤から張られる数々の伏線と回収の鮮やかさ、脚本の完成度の高さに驚愕した。特に、ストーリーを支える柱の数の多さと強固さ、それらが互いを邪魔せずに存在しているというバランス感覚が素晴らしい。“両親を結びつける”“未来に帰る”“ドクを救う”と、最後まで脚本の推進力が失われないのだ。ドクが変人発明家である事を、ドクの姿を直接見せずに展開していくオープニングから既に秀逸。時間通りにセットされた、自分と愛犬アインシュタインの朝食プログラムも、ポットをセットし忘れてダダ漏れのお湯、連日焼かれて黒焦げの食パン、山盛りになったドッグフードとゴミ箱の中に積もった空き缶と、コレだけでこれから面白い事が始まると期待を煽られる。また、脚本の完成度の高さの中でも、特段目を引いたのは「省略の上手さ」だ。高校の文化祭バンドの審査会、タイムスリップしてからの農家の人々とのやり取り、ダイナーで偶然昔の父と出会うetc.凡庸な脚本では、情けないマーティの姿や混乱する農家の人々との行き違う台詞のやり取り等、見ていて恥ずかしくなったり、まだるっこしくなりがちな部分を極限まで切り捨てて、テンポ良く展開してくれるので、ストレス無く観られる。こうした、観客にストレスを与えないサービス精神は、実はかなり難易度が高い。マーティの何気ない行動の数々が、次第に運命の歯車を狂わせていく様子のテンポの良さ、「一難去ってまた一難」の連続に、最後までハラハラとさせられる。ラストで無事現代に帰って来られたと思ったら、自身の行動が歴史を変えてしまった事に気付いて戸惑う。貧乏で冴えなかったはずの家と家族は、裕福な家庭と綺麗な服に身を包んでいるし、ガキ大将のまま中年になっていたビフは召使い。一見すると、主人公の生活が良い方向にシフトしたのだから立派なハッピーエンドなのだが、未来に向かったドクの帰還によって更なる展開へ突入し“次回へ続く”。ヒキの上手さも素晴らしい。

個人的に好きなのが、現代では刑務所に居る叔父さんが、過去の赤ん坊時代にはサークルの中に居るというジョーク。マーティの身に付けるカルバン・クラインの下着ネタも、ブランド力とネットが普及した現代ならではの笑いがあった。

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