寄付を受け「市民の命の最後の砦である市立病院を守り切ることができる」と語った兵庫県宝塚市の山崎晴恵市長=3日午後、宝塚市役所
兵庫県宝塚市は3日、老朽化のため建て替え方針の市立病院について、市内在住の資産家から建設資金250億円の寄付を受けたと発表した。今年度の市当初予算約900億円の3割近くの額に相当、新病院建設費の6割超を賄える額とあって、市は「市民の命を守ることができる」と謝意を示した。
寄付をしたのは、市内在住の元会社役員で「宝塚福祉コミュニティプラザ」を運営する財団の代表理事、岡本光一さん(77)と、同財団理事の妻、明美さん(75)。市が新たに基金を設け、5年以内に設計に着手することなどが条件で、市が条件を満たさない場合、寄付は解除される。市は今月開会の市議会に基金設置の条例案を提案する。
岡本さん夫妻はこれとは別に新病院に導入する手術支援ロボットの購入資金として、約4億円の寄付も行う。
岡本さん夫妻と同市の山崎晴恵市長は3日、市役所で記者会見。巨額の寄付について夫妻は「宝塚市と市民のためになるのなら、との思いで夫婦で話し合い、寄付をすることになった」と述べた。
夫妻は平成7年の阪神大震災後、ボランティアの力になりたいと財団を設立、ボランティアが無料で使える施設を整備するなどしてきた。一方で、夫妻に子供はないことから、財団を解散し、市に事業を継承する話し合いを進めてきた。
光一さんは「そのなかで、病院の建て替え費用が莫大(ばくだい)で財政上大きな負担になるとお聞きし、協力したいと思った」と寄付に至る経緯を説明した。
市によると、令和13年度中の開院を目指す新病院の建設費は約397億円で、寄付金はその3分の2近くを賄える額。今期限りでの退任を表明している山崎市長は「岡本さんのおかげで市民の命を守ることができ、市の財政も楽になる」と感謝の意を述べた。