攻め合う金峰山(奥)と霧島=両国国技館で2025年1月25日、新宮巳美撮影
大関経験者の霧島を最後は投げで、土俵に転がした。豪快な勝ちっぷりとは対照的に、金峰山の表情は冷静そのもの。初の賜杯に王手をかけても、気負いはないように見える。
力強い突き押しで星を伸ばしてきたが、この日の立ち合いは腕をはね上げられ、上突っ張りとなって力が伝わらない。霧島に右四つに組み止められ、両まわしを取られた上に頭までつけられた。
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金峰山は右下手を取ったが、左は上手に手が届かず、「ちょっと焦ったけど、落ち着こうと(思った)」。外掛けや強引な投げにも崩されることなく、最後は下手が切れても構わず繰り出した、すくい投げが決まった。
支度部屋で金峰山は「投げるんだったら、思い切り投げようと思って」と振り返る。劣勢からの立て直しに、土俵下の粂川審判長(元小結・琴稲妻)は「(勢いに)乗っている感じだよね。持っている以上の力が出ている」と好調ゆえの白星だとした。
木瀬部屋では幕尻だった2020年初場所の徳勝龍(現千田川親方)以来5年ぶりの優勝に向け、慌ただしくなってきた。10日目の段階では快進撃に「メッキがはがれるだろ」と苦笑交じりに語っていた師匠の木瀬親方(元前頭・肥後ノ海)も、優勝後に祝いの席で披露するタイの調達に乗り出している。
勝てば優勝の千秋楽に向け、金峰山は「(優勝は)考えていない」ときっぱり。部屋付きの千田川親方からは「このまま続けて(突っ張りで)手を出して(伸ばして)いけ」と助言を受けた。
無心に土俵を突き進んだ先に、歓喜が待ち受けている。【岩壁峻】