『仮面ライダークウガ 特別篇 放送25周年記念オリジナル編集版』©︎石森プロ・東映
平成仮面ライダー誕生から今年で25年と聞くと、もうそんなに経ったのかと感じる人も多かろうと思う。歴代の仮面ライダーが大勢登場する“オールライダー映画”が定期的に公開され、毎年制作される新作テレビシリーズも販促の面から、過去のライダーに変身したり召喚する能力を持つキャラクターが出てくるため、それほど懐古的な心境に至らないかも知れない。 【写真】富永研司が再びスーツアクターを務めた『超クウガ展』ビジュアル しかし番組単体として見ると、平成ライダー第1作『仮面ライダークウガ』の放送が始まった2000年は、まだ世間一般の放送受信機がブラウン管のテレビだった。地上デジタル放送が始まる10年も前のことだが、ハイビジョン撮影で制作した『クウガ』は、4:3のテレビ画面天地に黒いマスクをつけた16:9の画面比率で放送されたのだ。『仮面ライダーBLACK RX』(1988年)から10数年の時を経て蘇り、令和の現代までなお続くシリーズの基盤となった『仮面ライダークウガ』の歴史を振り返ってみよう。 『クウガ』は、従来の変身ヒーロー番組では定番であった悪の組織とそのアジトが出てこない点が目新しかった。敵にあたるのはグロンギと呼ばれる一族。彼らは人間を殺すゲームを独自のルールの中で楽しむ怪人たちで、ある取り決めのゲームに成功するとランクがあがる。人類に近い先住民族のグロンギは、同じく超古代の戦士クウガによって封印され、それが現代に復活して楽しみのために人殺しをしているのだ。本作の主人公・五代雄介(オダギリジョー)は、石化したベルト型の遺跡アークルを腰に装着することで、古代戦士クウガに変身する能力を得る。クウガの遺跡類に刻まれた謎のリント文字や、グロンギ同士が会話に用いるグロンギ語など、(日本語でも英語でもない)独自の文法を持つ不可思議な言葉がスタッフの考証で綿密に設定され、視聴者もグロンギが何を話しているのか解読・考察する楽しみ方があった。 怪人を倒したからといってクウガが即座に人間の味方と認識されるわけではなく、警察がグロンギたち怪人を指す「未確認生命体」と同等に、4体目に確認された「未確認4号」と呼称される辺りもユニークだ。未確認生命体の殺人事件を追う公僕にとって、クウガもまた未確認生命体の1つでしかない。作中のクウガは終始「未確認4号」あるいは「4号」と呼ばれ続け、五代も「仮面ライダー」などと自称したりしない。仮面ライダーを冠した番組でありながら、作品世界から“仮面ライダー”という固有名詞を排した脚本づくりもリアルだった。五代が未確認4号の正体であることを知る刑事の一条薫(葛山信吾)が、彼とバディ的な関係を築き、五代も戦いを通じて警察の信頼を得ていくというドラマが良い。危ないところをクウガに助けられ「大丈夫ですか!? 刑事さん」と声をかけられた刑事・杉田守道(松山鷹志)が、4号が他の未確認とは違うことに気付く第4話を経て、やがて五代の理解者になっていく展開は熱いぞ。
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