中国の新興企業ディープシークが開発した生成AI(人工知能)について、習近平(シージンピン)政権が官製メディアで喧伝(けんでん)を繰り広げている。最先端分野で「国産モデル」が米国勢に伍(ご)してAI強国化に近づいたとして、創業者の梁文鋒氏ら同社メンバーを英雄視する動きも広がる。(中国浙江省杭州 山下福太郎) 【写真】社員の平均年齢は30歳以下⁉…ディープシークの主要メンバー
梁氏は1月20日、経済や教育などの各界の専門家とともに李強(リーチャン)首相との座談会に出席した様子が国営中央テレビに報じられた。ここでの議論は、3月の全国人民代表大会(全人代=国会)で李氏が読み上げる政府活動報告に反映される見通しだ。ディープシークの「成功」を国策に取り込む意図もありそうだ。
共産党政権は昨年の政府活動報告に産業育成策「AIプラス」を盛り込んだ。中国は、オープンAIのチャットGPTなどで先行する米国勢に「1~2年の遅れ」とされる。安全保障や経済成長を左右するAIでの強国化を急ぐ中、ディープシークは国の威信を体現した成功モデルとの見方もできる。
梁氏は、AI研究で中国トップレベルとされる浙江省杭州の浙江大大学院を修了した。習主席は2002~07年に浙江省トップの共産党省委員会書記を務め、在任中、浙江大学を計18回も訪問した。当時、優秀な人材の育成や技術革新の必要性を指示していた。
同大を29日に高校1年の息子と訪れた女性(40)は取材に対し、「梁さんは中国の誇りです。息子もここで学んでほしい」と語った。
中国メディアは、梁氏が春節連休の1月末に広東省に帰省した様子も報じた。集落には「故郷の誇りと希望」と書かれた横断幕が掲げられ、「子どもの頃から成績優秀で、数学的な思考力が高かった」などと恩師の声を伝えた。
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ディープシークの技術系社員は約140人で、20~30歳代が中心だ。その一人、1995年生まれの女性、羅福莉氏は北京大修士課程に在学中の5年前、AIの国際会議で8本の論文に関与し、「天才少女」と話題を呼んだ。中国IT大手の小米(シャオミ)の雷軍・最高経営責任者(CEO)は昨年、年俸数千万元(数億円)で引き抜こうとした。
梁氏や羅氏らが地方や農村出身で、米国などへの留学経験のない点も国民の共感を呼んでいるようだ。
ただ、ディープシークについては、米オープンAIの技術を不正利用したとの指摘や個人情報の取り扱いへの懸念が欧米から出ている。共産党政権が宣伝色を強めれば、海外を中心に利用者の急増にブレーキがかかる可能性もある。
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