パナソニックHD、経営改革を発表–パナソニック解消で事業会社体制へ

加納恵 (編集部)

2025-02-05 14:37

パナソニック ホールディングスは、2月4日に実施した決算説明会で、グループの経営改革について発表した。「ソリューション領域」を中心としたグループの目指す姿を示したほか、家電販売などを担う「くらしアプライアンス社」など5つを持つ「パナソニック株式会社」を発展的に解消し、傘下にある分社を事業会社化する。

パナソニックを発展的に解消

現在、パナソニックの傘下にあるのは、くらしアプライアンス社、「空質空調社」「コールドチェーンソリューションズ社」「エレクトリックワークス社」「中国・北東アジア社」。2025年度中に方向を決め、2026年度からは事業会社体制へ移行する。

また、低収益事業として挙げた7事業については、産業デバイス事業、メカトロニクス事業、キッチンアプライアンス事業、テレビ事業を、成長が見通せず、投下資本利益率(ROIC)が加重平均資本コスト(WACC)を下回る「課題事業」、空質空調事業、家電事業、ハウジングソリューションズ事業を、事業立地の見極めが必要な「再建事業」とし、2025年度中に課題事業と見極めが必要な事業の方向づけをしていく方針を示した。

低収益事業の見極め

課題事業については、撤退や企業価値を最大化できるベストオーナーへの事業継承を含む抜本的な対策を講じるとし、売却する可能性も示唆した。課題事業の中にテレビ事業が入っていることについては、「家電は私たちにとって非常に大事な事業。そのためにも高収益にしないといけない。だからこそ大なたを振るわなければならない」(パナソニック ホールディングス グループ 最高経営責任者(CEO)の楠見雄規氏)とコメント。また、会見でテレビ事業に対する売却の可能性を問われると「売却という手段を取るかどうかは検討中で現時点における決定事項はない。ただ、(外に出す)覚悟はある」とした。

パナソニック ホールディングス グループ 最高経営責任者(CEO)の楠見雄規氏

楠見氏は「重点投資領域、競争力強化、固定費構造の3つに起因して、競争力と収益性、そして間接コストの面で課題を残したことを重く受け止めている。今回の経営改革の目的は、パナソニックが10年後、20年後、さらにその先の未来においても、より良い暮らしと社会へのお役立ちを果たすことである。そのために、自らを抜本的に変える経営改革が必要であると判断した」と経営改革に踏み切った背景を話す。

重点投資領域に位置付けていた車載電池、空質空調、サプライチェーンマネジメント(SCM)ソフトについては見直し、今後は「エネルギーソリューション」「SCMソリューション」といったソリューション領域を注力領域に定める。

「ソリューション領域にはグローバルでトップシェアに入る、競争力の高い事業が数多く存在する。エネルギーとSCMの分野それぞれで共通のお客さまに対してワンストップで向き合い、お客さまが求める価値を創出し、提供していくことで成長したい」(楠見氏)とする。

グループの目指す姿

さらに、パナソニック コネクトの子会社であるBlue Yonder、米国で冷凍・冷蔵ショーケースを手掛けるHussmannなど、フードサプライチェーンへの展開も視野に入れる。「今後ソリューション領域に注力し、そこでグループシナジーを発揮していくためにはくらし事業の範囲を超えた顧客課題、社会課題にグループ全体で向き合う体制に変える必要がある」と体制変更への思いを明かした。

今後は、パナソニックの発展的解消を2025年度までに終え、2028年度には自己資本利益率(ROE)10%以上、調整後営業利益率10%以上を目指すとのこと。経営改革の中には、人員の最適化や製造・物流・販売拠点の統廃合といった固定費の構造改革も含む。

楠見氏は「さまざまな経緯で積み重なり、硬直した固定費にメスを入れ、パナソニックグループが将来にわたってお役立ちを果たし続けるために固定費を一定の水準に戻していく」とした。人員の最適化も2025年度に実施し、2028年度には3000億円以上の収益改善効果を目指す。

生成AI関連事業が引き続き成長、苦戦続いたA2Wも流通在庫が改善

同日に発表した2024年度第3四半期(2025年10~12月)の連結決算は、売上高が2兆1526億円、営業利益が1323億円、当期純利益が995億円と減収となったが、パナソニック オートモーティブシステムの株式譲渡による影響を受けているもの。パナソニック オートモーティブシステムを除くと、増収になるとしている。

2024年度第3四半期連結業績

くらし事業、空質空調、家電がリードし、全体で増収に結びついたほか、苦戦が続いていた欧州における、環境に配慮した暖房システム「Air to Water」(A2W)が流通在庫の改善などにより増収に転じたことなどが増収要因になる。

好調が続く生成AI関連事業については「継続的に拡大しており、サーバーやデータセンター向け蓄電システムが好調。年間を通しても高成長が継続する見込み」(パナソニック ホールディングス 代表取締役 副社長執行役員 グループ最高財務責任者(CFO)の梅田博和氏)とした。

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