下條アトムさん(2017年撮影)
俳優の下條アトム(しもじょう・あとむ)さんが1月29日に死去したことがわかった。78歳。所属事務所のトム・プロジェクトが13日に発表した。「アトム」は本名で、手塚治虫の「鉄腕アトム」より以前に生まれていたことから当時大きな話題を集めた。
所属事務所によると、下條さんは23年9月に急性硬膜下血腫を患って以来、闘病生活を送っていた。1月29日、体調が急変し都内の病院で亡くなった。
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下條さんは1946年11月26日生まれ、東京都出身。映画「男はつらいよ」シリーズの3代目おいちゃん役で知られる俳優・下絛正巳さんと元女優の田上嘉子さんの間に生まれた。生まれたのは終戦の翌年で、日本はGHQの占領下にあったため、父が「将来は日本でもアメリカ同様“名前・苗字”の順に読むようになるだろう」と考え「A」から始まる名前をつけたと、テレビ朝日のインタビューで語っている。
「アトム」は原子力の意味。日本は原爆の被害にあったが、原子力は本来戦争ではなく平和のために使われるはずだ…という願いも込められているという
「アトム」といえば、手塚治虫の「鉄腕アトム」が有名だが、連載が始まったのは52年。鉄腕アトムよりも先にアトムという名前をつけられたと知った手塚治虫が驚き、下絛家に取材に来たという逸話も残されている。
俳優一家に生まれ、自身も俳優の道に進んだ下條さん。69年放送のNHK連続テレビ小説「信子とおばあちゃん」でドラマデビューし、映画・ドラマで活躍。声優としても活躍し、海外吹き替えでは俳優エディ・マーフィの吹替作品を多く担当。「エディ・マーフィでおなじみの下條アトム」と称された。また、ナレーターを務めた「世界ウルルン滞在記」は広く知られ、「出会ったぁ~」などの独特の口調を生み出した。
俳優・声優・ナレーターと幅広く活躍した下條さん。急性硬膜下血腫発症前に収録し、昨年10月から放送されたテレビCM味の素「生オリーブオイルソース 瀬戸内レモン」のナレーションが最後の仕事となった。