饒村曜気象予報士
(写真:イメージマート)
令和7年(2025年)の1月末は西高東低の冬型の気圧配置となり、強い寒気が南下して全国的に寒くなりました。
2月1日は、北日本は寒気が居座るので、最高気温が0度に達しない真冬日の観測地点数は1月末とほぼ同じですが、寒気の南下が弱まることから、西日本・東日本の最低気温が0度に達しない冬日の観測地点数は大きく減る見込みです。
寒気の南下が強いときには、西高東低の冬型の気圧配置となって日本の南岸では低気圧が発生しませんが、寒気の南下が弱まると、日本の南岸を低気圧が通過するようになります。
太平洋側で雪が降るのは、気温が低いときに南岸低気圧が通過するときです。
このため、太平洋の雪は、「春を告げる雪」と呼ぶことがあります。
寒気南下が弱まった2月1日は、東シナ海で低気圧が発生し、西日本から東日本の南岸を通過する予想となっています(図1)。
図1 予想天気図(左は2月1日9時、右は2日9時の予想)
このため、低気圧が接近する2月1日の西日本は、低気圧に向かって少し暖気が入りますので、山間部では雪が降りますが、平野部では雨の見込みです(図2)。
図2 雨雪判別予想(2月1日21時の予想)
しかし、南岸低気圧が、寒気が残っている東日本の太平洋側に接近する2月2日の節分の日の午前中は、平野部でも雪が降る可能性があります(図3)
図3 雨雪判別予想(2月2日8時の予想)
気象庁では、2月2日の関東甲信地方では、山沿いや山地を中心に大雪となり、平地でも積雪となる所があるとして、積雪や路面の凍結による交通障害に注意・警戒を呼び掛けています。また、東京都心でも3センチの積雪となる可能性があるとしています。
雪の多い地方にとっては、3センチの積雪は大きな影響が出ませんが、首都圏では交通機関が大混乱する懸念があります。
ただ、南岸低気圧による雨と雪は、影響が雲泥の差ですが、この判別はちょっとしたことで変わりますので非常に難しい予報です。加えて、今回は、図1で示したように、南岸低気圧の前面の関東の南海上には低気圧が発生する予想ですので、さらに難易度は上がっています。
東京都心では、大雪注意報の発表基準は12時間に5センチ、大雪警報の発表基準は12時間に10センチですので、低気圧の進路などによっては、積雪量が増えて、大雪注意報の発表があるかもしれません。
東京都心の詳しい気温
1月末の東京都心では、最低気温はほぼ平年並み、最高気温は平年より高い日が続いていましたが、2月1日も同じ傾向です(図4)。
図4 東京都心の気温の推移(2月1日以降は気象庁の予報、点線は平年値)
東京都心部に南岸低気圧に伴う降水域がかかるのは、2月2日朝頃と、一日でも気温が一番低くなる時間帯です。
また、日中の最高気温も5度と、平年よりかなり低くなる見込みであることから、都心でも積雪があるとの予報です。
ただ、南岸低気圧に伴う降水域がどこまで北上するのか、日中の気温がどこまで上がるかによって降雪量には大きな差が出ますので、最新の気象情報の入手に努め、注意・警戒してください。
最強寒波の襲来
南岸低気圧は日本の東で発達し、日本付近は2月4日頃から7日頃にかけて、西高東低の冬型の気圧配置となって今冬一番強い寒気が南下してくる見込みです。
寒気の強さの目安として、上空約5500メートルの気温が使われます。
上空約5500メートルで、氷点下30度で強い寒気、氷点下で36度で非常に強い寒気ですが、2月5日の昼には、氷点下36度の非常に強い寒気が近畿北部から関東北部まで南下してくる見込みです(図5)。
図5 上空約5500メートルの気温分布予報(2月5日昼の予想)
しかも、日本海北部には、氷点下42度以下の寒気も控えています。
北日本から東日本にかけての日本海側や西日本を中心に荒れた天気や大雪となるおそれがあり、平地でも大雪となるおそれがありますので、交通障害や農業施設への被害、ふぶきや吹きだまりによる交通障害、なだれに注意してください。
図1の出典:気象庁ホームページ。
図2、図3、図5の出典:ウェザーマップ提供。
図4の出典:気象庁ホームページとウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。
気象予報士
1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。