15日、韓国の高官犯罪捜査庁が入るソウル郊外の政府庁舎に移動する尹錫悦大統領
韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領(64)が昨年12月3日に「非常戒厳」宣言したことを巡り、内乱を首謀した疑いなどで捜査している高官犯罪捜査庁(高捜庁)や警察などの合同捜査本部は15日、大統領公邸で尹氏を拘束した。現職大統領の拘束は初めて。尹氏は高捜庁で取り調べを受けたが、黙秘している。 【写真】韓国の主な歴代大統領を巡る事件 その後、拘置所に移送された。約10平方メートルの独房に入るとみられる。高捜庁関係者は、夕食には味噌チゲが提供されると説明した。 尹氏は約3分間の映像メッセージを拘束後に公表。「流血の事態を防ぐため、違法捜査だが出頭に応じることにした」と強調した。 国会で弾劾訴追され職務停止中の尹氏が住む公邸。バスなど大型車両を使った壁や鉄条網を増設し「要塞(ようさい)」と称されていたが、大統領警護庁との物理的衝突は事実上なかったという。 3日に拘束を試みた際、警護庁要員ら約200人がつくった「人の壁」を前に令状の執行を断念していた捜査本部。今回は6倍近くに当たる約1100人の捜査員を投入した。 午前5時10分ごろに公邸前に到着した捜査員が令状を提示。抗議する尹氏の弁護団らとにらみ合いが続いた。同7時前に敷地へ進入し、入り口内側に警護庁が並べた複数のバスをはしごを使って突破。そこから警護庁の大きな抵抗はなく、尹氏がいる建物に向かい、同10時33分に令状を執行した。尹氏側は出頭する意向を伝えたが、受け入れられなかった。 高捜庁は事前に、抵抗すれば特殊公務執行妨害罪に問われると警告する文書を警護庁へ送付。一方、警察は10日に警護庁トップを辞任した朴鍾俊氏を特殊公務執行妨害容疑で捜査。トップ代行で、尹氏の拘束令状執行により強硬に抵抗する姿勢とされた金声勲次長にも13日、同容疑で拘束令状が発付された。 同庁幹部らの会議では大半の参加者が抵抗すべきではないと主張したほか、金氏の辞職を求める声も上がるなど、動揺が拡大。この日は一部要員が金氏の指示に従わなかったなどと伝えられた。 高捜庁は、48時間以内に最大20日間の拘束が可能な逮捕状を請求する見通し。大統領には不訴追特権があるが、内乱罪は例外。首謀者の法定刑は、死刑または無期懲役、無期禁錮と定められている。尹氏側は戒厳令は大統領の統治行為であり、内乱には当たり得ないと主張し、憲法裁判所で始まった罷免の是非を判断する弾劾審判でも正当性を主張。保守層から一定の支持をなお集めており、政治的混乱が続くのは必至だ。 ≪過去拘束 4人いずれも特赦≫韓国でこれまでに身柄拘束に発展した大統領経験者は4人いる。いずれも退任後に逮捕され、内乱罪や収賄罪で無期懲役判決を受けるなどした。4人はその後、特赦を受けており、97年4月に刑が確定した全斗煥氏と盧泰愚氏は同年12月に特赦で釈放された。李明博氏(83)は20年10月に収監され、22年6月に健康状態を理由に一時釈放。同年12月に特赦され、残りの刑期と罰金は免除された。17年に罷免された朴槿恵氏(72)も21年12月に特赦を受け、4年9カ月の収監生活から解放された。 ≪革新系政権なら日韓関係後退へ≫尹氏の親日姿勢を基に改善された日韓関係。今後、革新系政権が誕生すれば、関係が後退するのは必至とみられる。韓国は中国と北朝鮮に対抗する民主主義のとりでであり、日本のみならず、米国も懸念を強めている。林芳正官房長官は記者会見で、尹氏拘束に関し「一連の動きについて、特段かつ重大な関心を持って注視している」と言及。韓国は国際社会の課題に対応するパートナーとして重要な隣国だと指摘した。外務省幹部は「韓国内政の混乱がしばらく続く可能性がある。トランプ米政権が誕生するタイミングで、痛い」と話した。
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