日曜劇場「御上先生」飯田P、岡田将生起用の裏に「半沢直樹」の記憶|シネマトゥデイ

文科省の同期役!岡田将生(左)&松坂桃李(右) – (C)TBS

TBS系日曜劇場「御上先生」(毎週日曜よる9時~)の飯田和孝プロデューサーが、主演の松坂桃李(御上孝役)と対峙する重要な役どころを務める岡田将生(槙野恭介役)の起用理由などを明かした。

【画像】豪華すぎ!日曜劇場「御上先生」生徒役キャスト(全29名)

本作は高校教師となった東大卒のエリート文科省官僚・御上孝(松坂)が、令和を生きる生徒たちと共に、汚い大人たちの権力によって子供たちが犠牲になっている現実に立ち向かう“大逆転教育再生ストーリー”。飯田プロデューサーは2020年のコロナ禍にこの作品の構想を脚本家の詩森ろばと練り始め、日曜劇場「VIVANT」の制作後に主演の松坂へオファーを出したと明かしている。

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岡田の起用について、飯田プロデューサーは「松坂さんにオファーをした時、既にイメージキャストとして岡田さんの名前を書いていました」と早い段階で構想があったと明かす。「御上の文科省官僚の同期ということで、このキャラクターは非常に難しい役どころだと思っていたんです。世の中の皆さんにも絶対身近にいるであろう、親友であり、ライバルであり、仕事をする上での相棒とも呼べる人。そこはしっかり(主人公と)心が通った人だといけないと思っていました」と岡田演じる槙野のキャラクター像を明かし、「松坂さんが今36歳ですが、その年齢層の俳優さんで誰かとなった時に、岡田さんしかいないと思いました」と説明した。

岡田と飯田プロデューサーは、日曜劇場「小さな巨人」でタッグを組んでいる。「その時の岡田さんの役への向かい方、姿勢がすごく好きだったんです。それを頭に置いた上で、岡田さんと松坂さんが仲良いらしいと。根っこの部分でのお互いの信頼感があり、それが敵対関係や嫉妬だったりを表現する上で、きっと生きるんじゃないかなって思いました」

飯田プロデューサーはまた、日曜劇場「半沢直樹」のエピソードも紹介し、「パート1に出てくる半沢(堺雅人)、近藤直弼(滝藤賢一)、渡真利忍(及川光博)の三人の同期のエピソードの時に、僕も制作に携わっていたんです。あの三人の関係性、密な感じがすごくあのドラマを支えていたと思っているんです。今回も御上の同期の役は重要だなって思っていました。それで岡田さんにお願いしたいとなりました」と振り返る。

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御上が担任を受け持つ3年2組の生徒を演じるのは、オーディションで選ばれた29名の若手俳優だが、このオーディションについても飯田プロデューサーは「神崎拓斗(奥平大兼)というキャラクターが一番手になるのは最初から想定していました。まずそこを中心にと決めて台本を作ったんです。オーディション台本も御上と神崎のシーン、神崎と次元賢太(窪塚愛流)のやりとりのシーン、富永蒼(蒔田彩珠)と東雲温(上坂樹里)のシーンを始め、4パターンを使って行いました」とこだわりがあったことを回顧する。

飯田プロデューサーは「選ばれた人のキャラクターをそれぞれのキャラクターに肉づけして生徒役を作り上げていきました」と話し、「誰が誰を演じるかも熟考に熟考を重ねて決めました」と感慨深げ。「このドラマの主役は、生徒たちだと思っています。それは揺るぎない事実」と学園ドラマとして本当の主人公は生徒たちであることを強調。「世の中に生きる、社会、企業人たちを学校の中に投影しているという感じです。カテゴリーとしては学園ドラマですが、サスペンス要素もあり、社会派のエッセンスも入っている作品になっています」とアピールしていた。(取材・文:名鹿祥史)

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Netflixシリーズ「阿修羅のごとく」より障子に飛び散った赤ワイン

向田邦子の名作ホームドラマを是枝裕和監督がリメイクするNetflixシリーズ「阿修羅のごとく」(世界独占配信中・全7話)。年老いた父に愛人がいたことが発覚したのをきっかけに四姉妹それぞれが抱える葛藤や秘密が浮かび上がっていく本作では、「赤」が象徴的な色として使われている。

「阿修羅のごとく」赤い小道具の数々

1979年、1980年にNHKで放送され、舞台、映画化もされた「阿修羅のごとく」。Netflix版では、夫を亡くし、生け花の師匠として生計を立てる長女・綱子に宮沢りえ、会社員の夫と二人の子供と暮らす専業主婦の次女・巻子に尾野真千子、恋愛に不器用な図書館司書の三女・滝子に蒼井優、ボクサーの卵と同棲する四女・咲子に広瀬すずがふんする。四姉妹を取り巻く男性陣に、本木雅弘松田龍平藤原季節内野聖陽ら。

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是枝監督は「阿修羅のごとく」と、鎌倉を舞台に四姉妹を描いた自身の監督作『海街diary』(2015)は「“四姉妹”の物語の表と裏」と語っているが、本作の撮影を『海街diary』と同様、瀧本幹也が担っている。映画『そして父になる』(2013)、『三度目の殺人』(2017)など是枝作品の常連であり、写真家としても活躍する瀧本が35ミリフィルムでとらえた端正な映像の中でも特に印象深いのが“赤”だ。

例えば、赤ワインや赤い口紅、赤い毛糸玉、ボクシングのグローブ。3話では洗濯機の中を回る赤い靴下、洗い場の赤い食器、畳に置かれた赤い置時計、水槽の赤い海藻、剥かれた赤いりんごの皮などが映し出される。(石川友里恵)

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左上から時計回りにジェームス小野田、大塚萌香、平館真生、染谷知里、木下晴香、椛島光 – (C)NHK

横浜流星主演の大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」(毎週日曜NHK総合よる8時~ほかで放送中)の19日放送・第3回に登場するゲスト出演者の扮装写真が公開された。

【画像】米米CLUBジェームス小野田、木下晴香ら扮装ビジュアル

貸本屋から身を興して書籍の編集・出版業を開始し、のちに江戸のメディア王として時代の寵児となった蔦屋重三郎(横浜流星)を主人公にした本作。第3回「千客万来『一目千本』」では、蔦重が資金を集め北尾重政(きたお・しげまさ/橋本淳)と共に女郎を花に見立てた本「一目千本」に着手する。

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その「一目千本」のモデルとなる女郎たちを演じるのが大塚萌香 (亀菊役)、平館真生 (勝山役)、椛島光 (常磐木役)、木下晴香 (玉川役)、染谷知里 (嬉野役)。そして、湯屋の主人をジェームス小野田が演じる。

玉川を演じる木下晴香は、主演作「アナスタシア」をはじめ「モーツァルト!」「王家の紋章」「レ・ミゼラブル」など数々のミュージカルに出演。2019年に公開されたディズニーの実写映画『アラジン』の日本語吹き替え版で、ヒロイン・ジャスミン役の声優に抜てきされた。現在、「雲霧仁左衛門ファイナル」(NHK BS・NHK BSプレミアム4K)が放送中。

米米CLUBのメンバー、ミュージシャンとして活躍するジェームス小野田は舞台を中心に俳優としてもキャリアを重ねており、1月7日に自身のSNSで本作への出演を告知。「役柄は湯屋の主人、またの名はまだ言えません」と投稿していた。(石川友里恵)

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松坂桃李がエリート官僚の教師を演じる「御上先生」 – (C)TBS

19日から放送開始となるTBS系日曜劇場「御上先生」(毎週日曜午後9:00~)で主演を務める、松坂桃李の公式インタビューが公開された。作品や役柄の魅力をはじめ、撮影現場の雰囲気や理想の教育環境についても語っている。

【画像】全部で29名!「御上先生」隣徳学院3年2組キャスト一覧

「御上先生」は、左遷同然に高校教師となった東大卒のエリート文科省官僚が、18歳の高校生たちを導きながら、権力に立ち向かう“大逆転教育再生ストーリー”。主人公・御上孝(松坂)が担任を受け持つ、私立隣徳学院3年2組の生徒役はオーディションで選ばれた29人の若手俳優が演じ、御上を取り巻くキャストとして、吉岡里帆迫田孝也臼田あさ美櫻井海音林泰文及川光博常盤貴子北村一輝が出演する。

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エリート官僚の御上は「何でもできてしまうタイプ」だが、決して完璧な人間ではないという松坂は「実際に生徒たちとお芝居をする中で、御上は生徒によって教師にしてもらっている感覚も。生徒たちが御上との出会いで変化していくように、御上も生徒と向き合う中で教師として成長していく話でもあるのではないかなと」と語る。

若手俳優たちとの共演には「学生らしく賑やかなときもありますが、生徒の皆さんも全員プロなので、セットに入るとちゃんと逆算してお芝居をしています。だからこそ、僕も彼らをとても信頼しています」と刺激を受けている様子だ。

撮影を通して知った教育現場の変化に驚きつつ、理想の教育環境について「1人ひとりの個性を大事に伸ばす、主体性を大切にする学習環境が今より増えたらいいなと願っています」とコメント。さらに「独身時代は数年後くらいのことをぼんやり考えていましたが、子どもが生まれてからは15年以上先のことも考えるようになりました」といい「本作がより良い社会を育むための刺激となって、それが連鎖していってくれたら、作品に携わる僕らとしてはうれしい限りです」と作品に込めた思いを語っている。

「生徒によって教師にしてもらっている感覚も」

ーー本作のオファーを受けた際の思いをお聞かせください。

飯田和孝プロデューサーからお話をいただいたのが2024年のはじめごろ。文部科学省の官僚が高校に派遣され、官僚教師として令和の18歳と共に日本教育の闇に立ち向かうという企画内容を聞いて、とても興味が湧きました。今の学生たちは自分のころと比べても全く違う環境で過ごしているはず。僕自身にも家族ができたことで、今後の日本教育について考えるようになった時期だったので、すごくすてきなタイミングでお話をいただいたと思っています。日曜劇場「VIVANT」のころからお世話になっている飯田さんの熱量に応えたいと思い、ぜひとお受けしました。

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ーー脚本の詩森ろばさんとは、映画『新聞記者』以来の再タッグになりますね。

詩森さんが民放の連続ドラマの脚本を初めて手掛けると聞いて、これは面白いものになると確信しました。詩森さんは鋭い切れ味の刀でゆっくり斬り込んでいくような、怖さをはらむ脚本を書かれる方。斬っていくプロセスでさえもハラハラドキドキするので、そこで生まれるエンターテインメント性にとても魅力を感じています。

ーー御上はどのようなキャラクターですか?

御上は、ある事件をきっかけに「日本の教育を変えてやろう」と文科省の官僚になったキャラクター。私立隣徳学院に出向を命じられ、渦巻く闇の中心からではなく、別の角度から闇に切り込んでいきます。“文科省にいても変わらない、だったら、現場から教育を変えてやろう”という熱量を持っている人です。エリート官僚なので何でもできてしまうタイプではありますが、決して完璧な人間ではありません。実際に生徒たちとお芝居をする中で、御上は生徒によって教師にしてもらっている感覚も。生徒たちが御上との出会いで変化していくように、御上も生徒と向き合う中で教師として成長していく話でもあるのではないかなと。

ーーそんな生徒たちとのお芝居で意識していることは?

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御上の思いを生徒にしっかり届けるために、言葉の伝え方や、目の前にいる生徒のことを第一に考えています。教室では御上の言葉を、生徒29人、1人ひとりに同時に届けなければいけません。どういう話し方で、どのくらいの熱量でしゃべったら伝わるのか試行錯誤しながら教壇に立っています。

ーー飯田プロデューサーや宮崎陽平監督からはどんなリクエストがありましたか?

「セリフ量が多いので、話すスピードは少し速めで」というリクエストがありました(笑)。これって実は、限られた放送時間の中でメッセージを伝えるために計算しなくてはいけない重要なこと。早口ならいいというわけでもなく、視聴者の皆さんに届くようにしゃべらないといけないので、メリハリやスピード感に気をつけるようにしています。

ーー役作りにあたって準備したことは?

御上先生のモデルとなった工藤勇一先生(教育アドバイザー)の授業を受けさせていただきました。工藤先生の授業は本当に面白く、熱量と志にあふれていて、これは御上先生のモデルになるわけだなと。お芝居では、工藤先生の授業風景や話している姿も参考にさせていただいています。

ーー工藤先生の授業で印象的だった内容は?

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特に印象的だったのは、「自主性」と「主体性」の違いについて。工藤先生曰く、日本の教育では「宿題をやりなさい」「◯◯を勉強しなさい」などと言われたことを自発的にやる自主性に重きを置いている一方で、これからの社会で求められるものは、自分の意志で、責任を持って行動する主体性なんだそう。劇中の御上の授業でも、生徒たちが社会に出たときに「御上先生が言っていたな」と思い出してもらえるような、社会で生きていくうえで大切なことを教えています。

現場の一体感と生徒たちへの信頼

ーー大人キャストには豪華なメンバーが集まっていますが、撮影現場での様子は?

吉岡里帆さん演じる3年2組の副担任・是枝文香は、生徒の目線で寄り添い真摯に向き合う、御上とは対極にいるキャラクター。吉岡さんも役柄同様に生徒1人ひとりに自らフランクに話しかけていて、みんなをリラックスさせてくれています。教室のシーンは緊張の連続になることもあるのですが、吉岡さんのおかげでいい意味で空気がほぐれ、緊張と緩和のバランスが取れています。

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ーー撮影現場の雰囲気はどなたが作られていますか?

隣徳学院、古代真秀理事長役の北村一輝さんのおかげで、撮影現場の士気が上がっています。お芝居に対する熱量や向き合い方に驚かされますし、休憩中にも飯田さんと熱心に話している姿を見ることもしばしば。若手の俳優たちが言いにくいことを率先してズバッと言ってくださることもあって、その瞬間はいい意味で緊張感が高まります。北村さんが言うことは、芝居をする側からするとうなずけることばかり。監督が撮りたい映像と多少のずれが生じることもあるのですが、監督陣もその都度熱意を真っすぐに受け止めて試行錯誤してくださっています。

ーー生徒たちが集まる教室はどんな雰囲気ですか?

学生らしく賑やかなときもありますが、生徒の皆さんも全員プロなので、セットに入るとちゃんと逆算してお芝居をしています。だからこそ、僕も彼らをとても信頼しています。皆さん勉強熱心で、自分の撮影がない日にも「時間があるので見学に来ました!」という方もいて。そんな皆さんに僕も全力の芝居を届けたい。教室シーンの撮影のたびに背筋が伸びる思いです。

ーー松坂さんから生徒たちに声を掛けることはありますか?

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なるべく話しかけるようにしているのですが、僕は吉岡さんみたいにコミュニケーション能力が高くないのでポツポツとしゃべっています(笑)。その代わりと言ってはなんですが、僕史上一番差し入れをしている撮影現場になっているはず。コミュニケーション能力が高くない分、差し入れで頑張ろうと思って。皆さん美味しいと言って食べてくださるので、差し入れしている甲斐がありますね。

ーー生徒役の皆さんからアドバイスを求められることはありますか?

お芝居のことについて質問してくれた方には自分なりに答えていますが、いいアドバイスをできているのかどうか…。むしろ皆さんから刺激をもらっていることが多いので、先生と生徒というより、プロの役者同士として作品を一緒に作っている感覚です。

ーー学園ドラマの座長として撮影現場で心掛けていることは?

ドラマでは、いろいろな角度の映像を撮るため、何度も同じ芝居を繰り返します。なので、生徒たちを飽きさせないように、芝居の鮮度を保つことも大切。先生の話を聞く生徒の顔は、やはりいい表情を撮りたいものです。だからこそ、どのテイクでもいい感情を乗せて、いい状態で受け取ってもらえるように努めています。

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ーーリアクションだけのお芝居では集中力をキープするのも大変だとか。

そうですね。セリフがない撮影のときは特に。教壇から見ると、今日は気が抜けているなとか、この子は今日調子悪そうだなとか、この子はスイッチ入っているなとかがよくわかるんです。時には、今日はこの子寝ているなってことも(笑)。生徒たちはみんな協力的なので、そういう子がいたら起こしてあげて助け合っています。そういう様子も見ていてとても微笑ましいです。

ーー印象に残っている撮影でのエピソードを教えてください。

撮影スケジュールの兼ね合いで、時折、生徒数名が一緒に泊まって次の日の撮影に来ることがあります。そうすると不思議なことに、昨日より仲が良いじゃん!みたいなことが起こるんです。よく話すようになったなとか、下の名前で呼び合うようになったな、などの変化が見えて面白い。まるで合宿を経た後のような結束力を感じますね(笑)。

一児の父になって考えるようになった日本教育の未来

ーーご自身の学生時代と比べて、教育環境はどのように変化していると感じていますか?

本作の撮影においても、生徒たちがノートではなくタブレットで勉強をしていることに進化を感じました。僕は授業といえば紙とペンだろうと思っていたのですが、誰1人として紙のノートを持っていないことにびっくり(笑)。授業ではプロジェクターを駆使していて、僕の学生時代のスタイルとは大きく異なっています。

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ーー松坂さんが思う理想の教育環境は?

僕としては1人ひとりの個性を大事に伸ばす、主体性を大切にする学習環境が今より増えたらいいなと願っています。そして何より大切だと思うのは、子どもたちの選択肢をどれだけ増やしてあげられるか。子どもたちは教育を受ける過程でたくさんの経験をして、さまざまな人と出会って、多くの学びを得るはず。いざ自分が何をしたいのかを考えるときに、子どもが選べる選択肢を大人たちが増やしてあげられるのが理想だと考えています。

ーーお子さんが生まれてから、教育について考える機会も増えましたか?

増えましたね。独身時代は数年後くらいのことをぼんやり考えていましたが、子どもが生まれてからは15年以上先のことも考えるようになりました。すてきな社会になってほしいと願いながらも、そうならなかった場合のことも考えないといけない。本作がより良い社会を育むための刺激となって、それが連鎖していってくれたら、作品に携わる僕らとしてはうれしい限りです。

ーー最後に視聴者の皆さんにメッセージをお願いいたします。

シンプルなメッセージにはなりますが、「とにかく面白いから見てほしい!」という言葉に尽きます! 社会に一石を投じるような側面もありますが、エンターテインメント作品としてどんどん続きが気になる展開になっています。日曜の夜のひとときを絶対に飽きさせない。そして絶対に損をさせない時間にする自信があるので、ぜひご期待ください!

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映画『室町無頼』より大泉洋演じる蓮田兵衛(はすだ・ひょうえ) – (C) 2025『室町無頼』製作委員会

日本史上、室町時代に初めて武士階級で一揆を起こしたという記録を歴史に残した男・蓮田兵衛(はすだ・ひょうえ)。己の腕と才覚のみで混沌の世を豪快かつ軽やかに渡る兵衛の姿を描いた映画『室町無頼』が公開中だ。兵衛を演じるのは、数々のドラマや映画で主演を務める大泉洋。無頼=アウトローであり腕っぷし自慢ながら、どこか飄々としていて、つかみどころのない奥行きのある人物を“大泉ならでは”の味付けで魅力的に演じているが、どのようにして唯一無二のヒーローを形作っていったのか……? 撮影の裏側を、メガホンをとった入江悠監督が語った。

大泉洋、長尾謙杜、堤真一らメイキング<5枚>

歴史の教科書にも登場する、室町時代最大の戦・応仁の乱(1467年~1477年)前夜の京。垣根涼介の同名小説に基づく本作では、大飢饉と疫病により農民たちが疲弊するなか、お構いなしに年貢を搾り取る役人たちに、武士階級である蓮田兵衛と彼の元に集結した無頼たちが一揆を企てるさまを活写する。

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メイキングより大泉洋、入江悠監督

監督を務めるのは、『SR サイタマノラッパー』シリーズや『AI崩壊』『あんのこと』など規模の大小問わず幅広い作品に挑む入江悠監督だ。本企画は2016年にスタートし、撮影が終了するまでの歳月は足掛け8年に渡る。入江監督は「最初に原作小説を読ませていただいたとき、室町時代を舞台にした時代劇というのはほとんど記憶になかった。もともと子供のころから時代劇が好きだったのですが、室町時代をどうやって撮るのか」というのが一番の興味だったという。

企画はスタートしたものの、原作を忠実に描くとなると10万人以上のエキストラを要するなど現実的ではない部分をどうやって映像として表現していくかなど、難題が山積みだった。さらにコロナ禍に突入し、進行は困難を極めた。

それでも企画が生き残ったのは、兵衛役の大泉、そして兵衛のライバルであり幕府の警護役の首領・骨皮道賢(ほねかわ・どうけん)役の堤真一の作品に対する思いが強かったからだという。入江監督は「企画が走り出したときにまず脚本を書いたんです。そのホンに大泉さんが乗ってくださった。そして道賢役の堤さんも面白いと賛同してくれました。正直何度か映画化がピンチに見舞われたのですが、ずっと大泉さんと堤さんが“やりましょう”と言ってくださっていました。そのおかげでとん挫せずに生き残ったんです」と大泉、堤の熱意に感謝を述べる。

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大泉洋の持ち味も反映したキャラクターづくり

兵衛と才蔵(長尾謙杜)の師弟関係も見もの

劇中の兵衛は、農民たちのピンチを救うヒーローでありつつ、どこか飄々としており、無用と思えば関所などへの火つけも、人を斬り倒すことも辞さないダークな一面も持つ一筋縄ではいかない人物だ。

「最初に脚本を書き、大泉さんに正式に演じていただけるということになったことで、少しずつ大泉さんに寄せて書き直していきました。原作では兵衛が一揆の頭としてみなを束ねていくヒロイックな主人公なのですが、大泉さんが演じることで、どこかひょうきんと言うか、人懐っこさを前に出していきたいなという思いはありました」

その意図について、入江監督は「原作だと兵衛以外のキャラクターも結構笑える描写があるのですが、この映画では、そういう部分をすべて大泉さんに集約させたんです」と明かすと「兵衛の衣装に関しても、室町時代ということであまり選択肢はなかったのですが、裾の長さなど細かいところまで大泉さんと相談して仕立てていきました。一揆の話なので、後半はどうしても群衆のなかに紛れてしまう。その中でどう目立たせるかというのは、すごく考えました」と語る。

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荒廃した世界観は『マッドマックス』や『北斗の拳』がヒントに

入江監督は、応仁の乱前の荒廃した雰囲気を出すために「『マッドマックス』シリーズ的な、荒廃した近未来みたいなイメージを持ち込んだんです」といい「大泉さんからは『“北斗の拳”のキャラクターみたいな感じはどうかな?』という提案をいただきました。お互いこれまで見てきた“荒廃した世界”みたいなものを持ち寄って共有していきました」とヒントとしてイメージした作品を挙げる。

昨年12月に行われたジャパンプレミアでは、殺陣で満身創痍となったエピソードを披露していた大泉。それほどハードなアクションシーンが作品の大きな見どころになっているが、入江監督は「大泉さんが『映像の殺陣はあまり経験がない』と話していたので、こちらが思い描くところまでたどり着けるのか……」という不安があった。しかし大泉は「秘密の特訓をしてくる」と言い残し、次に現れたときは「格段に良くなっていた」と入江監督も驚いたという。

昭和の時代劇やマカロニウエスタンも参考に

兵衛は昭和の時代劇も参考に

“荒廃した世界”として『マッドマックス』や『北斗の拳』という作品を挙げていたが、兵衛自身のイメージは、昭和の時代劇を参考にしたという。

「最近の時代劇で描かれる武士階級の人って、折り目正しい人が多い印象があるのですが、昭和の時代劇って結構いい加減な主人公が多かった。分かりやすい例でいうと、黒澤明監督の『用心棒』(1961年)では、三船敏郎さん演じる浪人の桑畑三十郎は、利害関係だけで世を渡っていく。あとはいわゆる“股旅物”(※侠客や博徒などの主人公が各地を流れ歩く義理人情の世界を描いた映画)と呼ばれる作品がありましたが、根無し草的な主人公は兵衛のイメージに近いのかなと思いました」

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弱きを救う熱きヒーローでありながら、ドライな部分も持ち合わせる兵衛。その部分については「クリント・イーストウッドが演じていた“マカロニウエスタン”的な感じは、どこかで意識していました。大義名分があるわけではなく、たまたま流れ着いて、悲惨な状況を見て“しかたないから行くか”みたいな。だからこそ、あまりグッと肩入れしないドライさがある」とイメージを伝える。

「非常に多面的な人物像」と定義した兵衛。これまで大泉があまり演じてこなかった“無頼漢”“ドライさ”に、大泉の持ち味であるニクめない人間像をうまくブレンドできたら、という思惑を持って撮影に挑んでいたという。こうした人物像も、室町時代というあまり視聴者にもあまりなじみのない時代だからこそ「兵衛はどう歩いても、どんな見え方でもいい。彼が見つめていた未来を映画で描けばいい」とさまざまなチャレンジができた撮影だったことを振り返っていた。(取材・文:磯部正和)

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