スマートフォンなどの位置情報の精度を高める日本版GPS衛星「みちびき」が、2日午後、鹿児島県の種子島宇宙センターからH3ロケット5号機で打ち上げられ、予定の軌道に投入されて打ち上げは成功しました。
日本版GPS衛星「みちびき」を載せたH3ロケット5号機はメインエンジンなどに点火され、2日午後5時半、ごう音とともに種子島宇宙センターの発射台を離れました。補助ロケットやロケットの1段目などを切り離しながら上昇を続け、およそ29分後に衛星を予定の軌道に投入して打ち上げは成功しました。ロケットに搭載された「みちびき」は、GPSのような位置を特定する機能を持つ人工衛星で、現在は日本付近の上空で4機体制で運用されていて、スマートフォンなどの位置情報の精度を高めるために使われているほか、電波が通じない場所での緊急地震速報の配信などにも役立てられています。
政府は今回の衛星を含む3機を新たに打ち上げ、現在の4機体制を7機体制に拡充して運用する計画で、実現すれば海外の衛星に依存せず、日本の衛星だけで位置情報を提供することが可能になるとしています。
H3ロケットはおととし1号機の打ち上げに失敗し、対策を講じたあと、今回の5号機まで4機連続で成功しました。今後、国際的な衛星打ち上げビジネスの分野で市場に食い込んでいくためには、ロケットの信頼性を高めていく必要があり、今回の連続成功が信頼性の向上につながることが期待されます。
さらに国際市場でビジネスを展開していくには信頼性に加えて、価格競争力も求められることから、来年度には補助ロケットを使用しないことで1回あたりの費用を抑える形態での打ち上げも計画されていて注目されます。
「みちびき」は、アメリカのGPS衛星を補完し、スマートフォンやカーナビなどの位置情報の精度を高める人工衛星で、日本版GPS衛星とも呼ばれています。2018年に4機体制での運用が始まり、2021年には設計上の寿命を迎えた初号機の後継機が打ち上げられました。政府は今回の衛星を含む3機を新たに打ち上げ、現在の4機体制を7機体制に拡充して運用する計画で、実現すれば海外の衛星に依存せず、日本の衛星だけで位置情報を提供することが可能になるとしています。拡充される3機のうち、今回打ち上げられるのは、上空およそ3万6000キロの「静止軌道」に投入されるみちびきの6号機です。世界的に獲得競争の激しい静止軌道上の位置を確保するため、別の軌道に投入される5号機より6号機が先に打ち上げられるということです。さらに、5号機と7号機も来年度中に打ち上げる計画です。これらの3機の衛星には、衛星どうしや、衛星と地上の距離を双方向から計測する「高精度測位システム」という新たな機能が備わっています。
この機能が将来、みちびきのすべての機体に搭載されれば、精度が飛躍的に向上し、スマートフォンなどで位置情報を受信した際の誤差が現状の最大10メートルから1メートルまで改善されるということです。
今回打ち上げられたみちびきの6号機には、宇宙領域を把握するためのアメリカ軍のセンサーも搭載されていて、スペースデブリ、いわゆる「宇宙ゴミ」の監視などに役立てようとしています。打ち上げの成功を受けて去年12月に発足した在日アメリカ宇宙軍のトップ、ラートン司令官はNHKの取材に対し、「アメリカ宇宙軍は、アメリカのセンサーを衛星に搭載するという歴史的な機会を提供してくれた日本に感謝している」とコメントしました。そのうえで「衛星や宇宙ゴミは、より多くの国が宇宙へアクセスできるようになるにつれ、増加している。今回打ち上げられたセンサーは静止軌道上の状況把握を向上させ、日米同盟を支える能力を強化するものだ」として意義を強調しました。
宇宙領域をめぐっては、日米両政府が協力の推進を目指していて、アメリカ軍によりますと、同様のセンサーは来年度中に打ち上げられる計画のみちびきの7号機にも搭載されるということです。