1978年、本塁打を放ち、田淵(左)に迎えられる掛布
野球殿堂博物館は16日に都内で今年の殿堂入りを発表し、エキスパート表彰では阪神で3度の本塁打王に輝き、85年の日本一に4番として貢献した掛布雅之氏(69)が選出された。 【田淵幸一氏からの祝福】 カケ、おめでとう。殿堂入りは野球人にとって一番の夢。掛布は入って当たり前だとずっと思っていたから、今回は本当にうれしい。会見場で直接お祝いをしたかったが、右足を骨折してリハビリ中のため行くことができなかった。申し訳ない。 思い出はいっぱいある。実はドラフト6位で入団する前に安藤統男さんに「いい高校生がいる」と連れられて千葉の実家に寄せてもらったのが最初。お父さんに「阪神に入れてください」とお願いしたことを覚えている。入団後も家でよく食事をしたな。大阪の北新地で一緒に歩いていたら「負けたのに、よく出歩けるな。バット振っとけ」とヤジられたこともあった。「見返す気持ちでやれよ」と声をかけたら、彼はそれを守って一流の仲間入りを果たしてくれた。 持って生まれた才能に恵まれたというより、たえず努力をしてきた選手だった。体格的にはアベレージヒッター。それでも私のミートポイント、打球角度も参考にして「どうすれば本塁打を打てるのか」と研究を重ね、本塁打王のタイトルも獲り、阪神の不動の4番をつかみ取った。 プレゼントした「ジュン・イシイ」のバットを素振り用として大事にしてくれた。わざわざ専用のバットケースを作り、移動でもトラックに積み込むこともなく、自分で運んで宿舎で振っていた。私が西武へトレードされたとき「オレみたいに出されるような選手になるなよ。阪神一筋を貫け」と伝えた申し送りも、彼はずっと支えにしてくれたと聞いた。
球団創設90周年のOB会長としての活動にも期待している。右足が完治したら、喜んで協力させてもらうつもりだ。 (スポニチ本紙評論家)