他人の人生を軽率に奪い、その後ものうのうと生きる人間に、暴力をもって報復を行う「復讐屋」のカモとトラ。行き場のない怒りを抱えた人たちは、彼らに救いを求め、復讐を依頼する。そんな2人の「正義」を描いた作品『善悪の屑』と続編『外道の歌』(ともに、渡邊ダイスケ/少年画報社)が、この度「DMM TV」で実写ドラマ化された。
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坊主頭にサングラスをかけた無愛想な男、鴨ノ目武(カモ)を窪塚洋介、関西弁を話し、ムードメーカーだが短気で喧嘩っ早い島田虎信(トラ)を亀梨和也が演じる。
(C)DMM TV
窪塚の醸し出すミステリアスな雰囲気と迫力、そして、過去編で見せるまるで別人のような表情はさすがだ。また、かつて凄惨な現場を目撃したカモの、過呼吸で横たわるシーンはまさに原作リスペクトと呼べるものだった。加えて、亀梨演じるトラも、すぐに頭に血が上る、瞬間湯沸かし器のような気迫が凄まじく、コミカルな演出にもとても馴染んでいる。見事に鍛え上げられた肉体は、そのトラの強さを裏付けている。2人並んだ姿は頼もしく、まさに無敵である。
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ドラマ第1話は、両親と従姉妹を殺害された開成奈々子(南沙良)の視点から始まる。犯人の不可解な行動から一命を取り留めた彼女は、取り調べをする警察官を盗聴したことで「復讐代行」という存在を知るのだった。
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復讐代行をするカモは、表向きは「カモメ古書店」という古本屋の店主。しかし裏の顔を知っている人々は、本を買うふりをして、彼に復讐を依頼する。
テーマがテーマなだけに、残酷で刺激の強い場面が多い作品だ。そして、これは原作ファンにも安心してほしいことだが、実写化したからといってマイルドになることもなく、むしろ演出や音声、効果音、そして目をつぶっても響いてくる悲鳴のせいで、より残虐性を増しているともいえる。
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カモやトラの壮絶な過去、法を掻い潜るようにして行われる非道な行為、それらが交錯しながら視聴者に迫るような構成になっていて、見ている側も自然と怒りが湧き上がり、気がつけばカモとトラによるあの「復讐」という名の残酷な拷問を待ち侘びてしまう。また、事件に巻き込まれた被害者、そして彼らを痛めつけた加害者、双方の役者の演技が素晴らしく、被害者の気迫のある姿に胸を締め付けられると同時に、これからなぶり殺されるだろう加害者の表情に思わず自分も冷や汗を流す。とても心が忙しくなるドラマだ。
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日々報道される、凄惨な事件や事故のニュースに心を痛め、加害者に腹を立て、その量刑に疑問をもつ。なぜこれだけの罪を犯し、他人の人生を台無しにした人間が、この程度の償いで人生を再スタートすることができるのだろう。被害者は泣き寝入りするしかないのだろうか? SNS上では度々「極刑でいいだろ」「こいつも同じ目に遭わせるべきだ」といった論調を見かける。『外道の歌』はそういった世相を背景に生まれた。
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そして、実写ドラマは、脚本、演出、そして役者たちの鬼気迫る演技により、視聴者はより感情移入しやすく、原作のもつテーマや問題提起をより強く炙り出しているように感じる。カモとトラの正義の執行に興奮しながら「もっとやれ!」と暴力を望む自分に気づき、立ち止まる。この感情の延長線上に、自分たちが強く憎む加害者の姿があるんじゃないか?
さまざまな思惑と憎しみ、そして欲望が渦巻く当作品。原作の魅力を存分に引き出し、それでいて実写化だからこその迫力も楽しめる。ドラマの力を感じる作品だった。
文=園田もなか
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■DMM TV オリジナルドラマ「外道の歌」 原作:渡邊ダイスケ『外道の歌』(少年画報社)
南沙良 森崎ウィン 馬場ふみか 溝端淳平 杉本哲太
監督:白石晃士