米国のWHO脱退、世界への影響は 日本の分担金負担も増加?

有料記事トランプ再来

足立菜摘 藤谷和広 後藤一也

越智萌さんのコメント

スイス・ジュネーブの世界保健機関(WHO)本部で2024年12月、記者会見に臨むWHOのテドロス事務局長=AP

米国のトランプ大統領が21日(現地時間20日)、世界保健機関(WHO)から脱退する意向を表明し、大統領令に署名した。前回の政権時の2020年にも、WHOの新型コロナウイルスをめぐる対応を「中国寄り」などと批判して脱退を通告し、その後の政権交代で撤回された経緯がある。米国が実際に脱退すれば、WHOの運営からワクチン開発まで、様々な影響が出るとみられている。

米国は1948年のWHO加盟時、脱退する場合は米国議会への通告から1年の猶予期間を置くことを取り決めている。これが守られれば、実際に脱退するのは来年以降になる。

脱退で最も懸念される影響は、WHOの資金調達だ。WHOの予算は各国に義務づけられた分担金と任意の拠出金などから成り、米国は拠出国の第1位。22~23年には、WHOの調達資金の約15%にあたる12億8400万ドルを提供した。

その大部分は、紛争地域などでの医療保健活動や、感染症対策、ポリオ撲滅活動などに使われている。

WHOは今月16日にも、パレスチナ自治区ガザアフガニスタンなどでの「進行中の健康上の緊急事態に対応するため」の資金の拠出を加盟国に求めたばかりだ。

テドロス事務局長は「適切で持続可能な資金がなければ、我々は誰が治療を受け、誰が受けないかを決定するという不可能な課題に直面することになる」と訴えている。

厚生労働省の関係者は「米国が脱退すれば、日本にも分担金の負担を上げるように、との要請がWHOから来るだろう」と想定する。米国の脱退後は、分担金の拠出国の第1位は中国になるが、「(WHOの資金は)現在は分担金よりも任意拠出金の割合の方が多く、純粋に分担金の順位で中国が影響力を持つ、ということにはならないだろう」とも話す。

パンデミック条約・H5N1対策にも影響?

今後の感染症対策も懸念されている。

WHOでは5月の総会で「パ…

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この記事を書いた人

藤谷和広

くらし報道部|厚生労働省担当

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専門・関心分野

災害、民主主義

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  • 越智萌
  • (立命館大学国際関係研究科准教授)
  • 2025年1月21日16時38分 投稿
  • 【視点】
  • ホワイトハウスの発表では脱退の目的として、「米国は、中国武漢およびその他の世界的な健康危機から生じた COVID-19 パンデミックに対する同組織の不適切な対応、緊急に必要な改革の採用の失敗、WHO 加盟国の不適切な政治的影響からの独立性を
  • …続きを読む
  • #トランプ再来

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