(社説)大学入試改革 公平な実施を最優先に

社説

大学入学共通テストに臨む受験生ら=2024年1月、東京都文京区の東京大、代表撮影

きょうから大学入学共通テストが始まる。今回は新学習指導要領に対応して、「情報1」が加わるなど出題科目が大きく変わる。また、2013年に政治主導で議論が始まった大学入試改革の「集大成」と位置づけられる。

5年前に英語民間試験と記述式問題が頓挫したのは、高校などからの指摘を無視して強引に進めたためだ。今も共通テストの長い問題文には賛否両論があり、「情報1」には高校で教える態勢の地域間格差が指摘されている。失敗の教訓を生かし、文部科学省は今回の結果についても、公平性などに問題があった場合は柔軟に修正すべきだ。

入試改革の議論は、安倍首相(当時)肝いりの教育再生実行会議による13年の提言を受け、本格化した。大学入試センター試験に代わる新テストを導入し、英語民間試験を活用することなどを求めた。

文科省は17年、共通テストでの英語民間試験と記述式問題の活用を決定。高校側から、地域や家庭環境で受験生の格差が生じ、採点の公平性も担保できないなどと指摘されたが、耳を貸さなかった。

転機は共通テスト開始まで1年に迫った19年秋。萩生田光一文科相(当時)の「身の丈」発言だった。格差を容認したと受け取られて批判が集中し、支持率低下を恐れた首相官邸が主導する形で、いずれの活用も見送りが決まった。

その後に文科省が設けた有識者会議は21年、頓挫に至った経緯について「共通試験に何でも盛り込もうとすべきではなかった」などと批判。正式に活用断念が決まった。

一方で会議は、記述力や民間試験で測る英語4技能(読む・聞く・話す・書く)について、各大学が個別試験で活用することを推奨した。今や英語民間試験を入試に使う大学は6割を超え、記述式問題の活用も進んでいる。

入試改革が節目を迎え、いずれ「次」に向けた議論が始まるだろう。その際は受験生らを混乱させた失敗を繰り返さぬよう、高校や大学、専門家らの意見を十分に聴いて進めることが欠かせない。

共通テストは、多ければ6教科8科目を勉強する受験生の負担も、試験当日の時間割も限界に達している。こうした現状も考慮しながら、公平で実務的に問題なく実施できることを第一に考えたい。

また、早く進学先を決めたい受験生や保護者と、早く学生を確保したい大学の意向が合致し、半数以上の学生が総合型・学校推薦型選抜で入学しているのが現状だ。こうした入試全体を見渡した検討も必要となる。

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