久保建英が国王杯で見せた圧倒的プレー ソシエダのレジェンドはメッシと比較していた|au Webポータル

1月16日(日本時間17日)、スペイン国王杯ラウンド16。レアル・ソシエダ(以下ラ・レアル)はラージョ・バジェカーノを3-1と下し、ベスト8に勝ち進んだ。中2日という厳しい日程だったが(相手のラージョは中5日だった)、下部組織スビエタ出身のホン・アンデル・オラサガスティがすばらしいミドルを決めるなど、地力の強さを見せた。これで2020年以来の優勝も照準に入ってきた。

快勝の立役者となったのは、久保建英だ。

この日、久保はボールを持つと無双状態だった。スピードがある、という選手は数多いが、久保はスピードを”操れる”。ボールコントロールをするなか、ほんのわずかなタイミングの差を引き起こし、相手を置き去りにできる。それは居合抜きに近い。相手に動作を起こさせ、たちまち剣を抜いて、斬り捨てる。相手は、斬られた感覚もないだろう。気づいた時は”血みどろ”だ。

久保は、あらためて凄みを見せつけたと言える。

「怪物」

そう言われる領域に達しつつある――。

ラージョ・バジェカーノ戦で先制ゴールをアシストした久保建英(レアル・ソシエダ) photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

前半22分の先制点のアシストは妖艶ですらあった。左CKで左サイドに回っていた久保は、アンデル・バレネチェアからのパスを受けると、相手ディフェンダーと1対1に。小さなフェイントをいくつも入れ、瞬間的に縦へ抜き去ると、左足でミケル・オヤルサバルに合わせた。

「日本代表、久保のすばらしい個人技だった。最後はキラーパスでゴールをお膳立て」(スペイン大手スポーツ紙『マルカ』)

久保が左サイドで使われるといっせいに不満の声が上がるが、クラシックなウイングプレーは最もシンプルに、効率的に得点が生み出させる。久保のベストポジションはおそらくラ・レアル1年目のようなツートップの一角で、自由にピッチを動けるようにすべきだろう。左サイドでも十分、怖さを出せるからだ。ダビド・シルバ引退後は4-3-3というシステムに戻さざるを得ず、その場合、右サイドがベターというだけだ。

そのプレーは、安っぽい「ポジション論」に収まらない。

【敵を警戒させてチームを優位に】

60分、自陣でボールを受けた久保は、カウンターを発動している。ひとりをひらりとかわしたあと、ふたりがかりで追いすがられる。どうにか止めようとするディフェンスがラグビーまがいのタックルを仕掛けてきたが、瞠目すべき推進力で前に出る。ふるい落とすように、ふたりを置き去りに。オヤルサバルへのパスからのバレネチェアのシュートはVARで取り消されたが、久保の真価が見えた。

〈止められない〉

そんな存在になりつつある。ポゼッションであろうが、カウンターであろうが、どんなスタイルにもフィットできるほど圧倒的だ。

「あえて言えば、タケはメッシに一番似ているよ。ボールを運び、ゴールに向かい、アシスト、もしくはシュートのところでバリエーションが多い。ほとんど生来的に周りと協調し、プレーの可能性を広げられる」

ロペス・レカルテが、久保をリオネル・メッシと比較していた言葉を思い出す。

レカルテは1990年代から2000年代にかけ、10シーズン以上、ラ・レアルの左右のサイドバックとして320試合に出場。2003-04シーズンのクラブ史上初のチャンピオンズリーグでベスト16進出に貢献した。

ラ・レアルのオールタイム・ベストサイドバックが久保をメッシと比較したことは重要だった。

「タケをどう止めるか? 正直、相当に苦労するだろう。ボールを持たれたら、アドバンテージを取られてしまう。ディフェンスとしては距離をとって、彼のアクションに反応するしかない。近い距離からフェイントで動かされると、背後を取られるからね。でも、自由を与えてしまったら……メッシもそうだったけど、タケは左足がすごいんだけど、右足でも繊細なキックやコントロールができる。左足一本ならどうにか守れるんだけど、両足だと……」

守るほうとしては、久保は「手持ちカードが多すぎる」のだろう。

ラージョ戦の久保は、ピッチに立つだけで敵を警戒させ、チームに優位を与えていた。たとえパスが通らなくても、そこで生まれた混乱から味方がシュートに持ち込んだシーンも一度ではない。オラサガスティのスーパーミドルも、久保が前線で潰されるなか、それでもチームとして前に矢印を持ったパスを入れ続けたことで決まっていた。

「”スター”久保に導かれたチームだが、この日は彼を助けるすばらしい役割の選手たちもいたおかげで、ホーム7試合負けなしを更新(6勝1分け)。ホーム7試合負けなしだったラージョを破った」(スペイン大手スポーツ紙『アス』)

1試合ごとに、久保はアップデートする姿を見せている。

ラ・レアルは次の試合も、中2日で迎える。ラ・リーガ、バレンシアの敵地へ。その後も中3日で、ヨーロッパリーグのラツィオ戦と続く。

過酷な日程だが、試練を乗り越えた久保は、さらに怪物へと近づく。

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