フィリーズとマイナー契約を結び、笑顔で取材対応する青柳晃洋(撮影・山手 あかり)
阪神からポスティングシステムを利用してメジャー移籍を目指していた青柳晃洋投手(31)が18日、フィリーズとマイナー契約で合意した。日米の両球団が発表した。この日午前7時(米東部時間17日午後5時)に設定されていた交渉期限の約2時間前に滑り込み、夢への挑戦切符をつかんだ。フ軍は大谷翔平投手(30)が所属するドジャースと同じナ・リーグで、ワールドシリーズを2度制覇した古豪。新天地での新境地開拓を期す右腕は招待選手としてメジャーキャンプに参加し、まずはメジャー昇格を目指すことになる。 待望の吉報はリミットぎりぎりに届いた。昨年12月4日にポスティングシステムの申請が受理され、翌日から交渉期間に入って45日目。青柳本人がフィリーズとのマイナー契約決定を知ったのは交渉期限1時間前の午前6時頃。そしてフ軍からの発表は、期限を過ぎていた。この日も静岡県沼津市内で自主トレに励んだ31歳右腕が夢への大きな一歩を踏み出した。 「正式に決まったのが本当に期限の1~2時間前。向こう(代理人)はもう少し早かったと思いますけど、僕が知ったのは(期限の)1時間前だった。自分が挑戦したいところに行けるチャンスをいただいた。感謝だったり、もちろん不安もあったので、そういうところに安どの気持ちがあったのかな」 うれしさとともに押し寄せた高揚感。15年にドラフト5位で指名され、プロの世界に足を踏み入れた時の胸の高鳴りが、ふとよみがえった。マイナー契約で厳しい環境であることはもちろん承知の上。それでも「本当にドラフトのルーキーの気持ち。違う野球に触れてみたいという好奇心だったり、夢だったりというところになってくる。第一歩に入ったと思ったら、凄い楽しみが大きい」と屈託のない笑顔で語った。 新天地はナ・リーグ東地区のフィリーズ。ワールドシリーズを2度制した古豪で、昨年は地区優勝を飾った。阪神が日本一に輝いたのも2度。そして、老舗球団、熱狂的なファンが多い…など古巣と似た雰囲気を感じる。そのイメージについては「凄い強いチームだと思いますし、メジャーでも有名な選手が多い」と目を輝かせた。 21年から2年連続で13勝を挙げ、最多勝など数々のタイトルを手にした右腕。プロ10年目の節目を迎えるにあたり、「お金より大切なものがある」と収入減を覚悟の上で、単身渡米で夢を追いかけることを選んだ。来月から海の向こうで始まる新生活。「言葉も分からないし、アメリカ本土にも行ったことがない。日々戦いだと思いますけど、自分の中で挑戦しながら成長できたら」と新境地の開拓を思い描く。 今後は22日まで国内での自主トレを継続する予定で、現時点で渡米の日程は未定。来月中旬からスプリング・トレーニングに招待選手として参加し、まずはメジャー40人枠入りを狙う。「メジャーリーグのマウンドに立つことが一番の目標。まずはそこのマウンドを目指して頑張るしかない」――。目指すは、大谷翔平と同じ舞台。この瞬間、人生を懸けた挑戦が幕を開けた。(山手 あかり) ≪21年から2年連続最多勝と勝率第1位≫ ◇青柳 晃洋(あおやぎ・こうよう)1993年(平5)12月11日生まれ、神奈川県出身の31歳。川崎工科から帝京大を経て15年ドラフト5位で阪神入団。19年から先発に定着し、21年から2年連続で最多勝と勝率第1位のタイトル。22年は最優秀防御率を含む3冠。23、24年の2年連続で開幕投手を務めた。21年開催の東京五輪日本代表。1メートル83、83キロ。右投げ右打ち。 ≪過去に井口、田口が在籍≫ ▽フィラデルフィア・フィリーズ 1883年にフィラデルフィア・クエーカーズとしてナショナル・リーグ参入。1890年からフィリーズ。「フィリー」はフィラデルフィアの略称。22年までリーグ優勝8度。80、08年の2度ワールドシリーズ優勝。過去に井口資仁、田口壮が所属していた。本拠地球場はペンシルベニア州フィラデルフィアのシチズンズ・バンク・パーク。
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