フジテレビ本社ビル=丸山博撮影
タレントの中居正広さんと女性とのトラブルを巡ってフジテレビ社員の関与が報じられている問題を受けて、トヨタ自動車やNTT東日本などのスポンサー企業が、フジテレビで放映していた自社CMを公益社団法人ACジャパンの公共広告に差し替える動きが広がっている。災害後にもCMが目立つACジャパンとはどのような組織なのだろうか。
前身となる関西公共広告機構が発足したのは1971年。高度経済成長期に景気が上昇する一方で、環境汚染や公共マナーの悪化、人間関係の希薄化などが表面化。社会のひずみについて考えるきっかけとなる広告を発信しようと、サントリーの社長だった佐治敬三氏が提唱した。74年には公共広告機構として認可され全国組織になり、2009年にACジャパンと名称を変更した。
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テレビやラジオなどメディアを通じて社会問題の啓発をしており、公的資金は受けずに民間企業と個人の会員からの会費で運営する。加盟企業は2024年3月31日現在1034社にのぼる。
ACジャパンのCMを目にする機会が増えるのは、災害の発生後だ。11年の東日本大震災後には、放送局のCMのほとんどが同社のものになった。非常事態のなかで嗜好(しこう)品や娯楽品などの自社製品をPRするCMを流すことは、企業のマイナスイメージにもつながりかねないとの懸念から、スポンサー企業の意向で、放送するはずだった枠を埋めるためにACジャパンのCMを流すことが多い。東日本大震災直後には、同社の公共広告一色になり、広告で使われた金子みすゞさんの詩集が売れるなど社会現象にもなった。
今回の問題は災害とは異なるが、企業イメージ悪化につながるとの懸念から、1カ月前には決まるとされるCM枠を、スポンサー企業の意向で差し替えているとみられる。【古屋敷尚子】