6人組の男女ツインボーカルバンド Penthouseが、1月20日にデジタルシングル「ナンセンス」をリリースした。本曲は、板垣李光人と中島裕翔がW主演を務める1月度のドラマ『秘密~THE TOP SECRET~』(カンテレ・フジテレビ系)のオープニングテーマに起用されている。バンドのキーパーソンである浪岡真太郎(Vo/Gt)曰く「Penthouse史上一番ロック色が濃い曲」というアップチューンとなった「ナンセンス」は、語感で日本語と英語を同列に扱いながらしっかり意味もこめる歌詞、タイトなバンドアンサンブル、ロック然とした各楽器のサウンドメイキング、そして洒脱な趣きがありながら力強いメロディなど、Penthouseの真骨頂と新境地が同居する1曲となった。浪岡、大島真帆(Vo)、矢野慎太郎(Gt)、大原拓真(Ba)、平井辰典(Dr)の5人に話を聞いた。(伊藤亜希)
「無駄なものが何ひとつないのがPenthouseの特長」
――「ナンセンス」の制作はどのように始まったんでしょうか?
浪岡真太郎(以下、浪岡):タイアップが決まっていたので、ドラマのスタッフと打ち合わせをしたのが最初ですね。「ちょっとお洒落なコード進行で」っていうリクエストがあったので、そこにアイデアを出していきました。結局5つくらいサビを作って、先方に選んでもらったサビから膨らませて作っていきましたね。
――その後、バンドで仕上げていく時、デモと変わったところは?
平井辰典(以下、平井):1番と2番で、ちょっとドラムのパターンを変えてみたり。
――ギターも違ったりしてますもんね。
矢野慎太郎(以下、矢野):そうですね。2番のAメロは、角野(隼斗)のピアノが入ってから変えました。角野のピアノがすごくいい感じだから、デモの段階では1番と同じパターンが入ってたんですけど、2番ではテンションを落としたフレーズにしました。ギターのレコーディングの時に、意見を交換しながら変えていった感じですね。
――最新アルバム『Laundry』(2024年11月)もそうですけど、サウンドはタイトだけど情報量がすごく多い。そんな中、アウトロもイントロもどんどんタイトになってきていませんか。
浪岡:確かに(笑)。それは単純に短いヒット曲が増えてきてるなっていうのがあって。2024年だとDa-iCEさんの「I wonder」や、こっちのけんとさんの「はいよろこんで」も2分台の曲なんですよね。それで「2分台でもいいんだな」と思って。固定観念的に「3分以上あったほうがいいんだろうな」と思っていたんですけど、「別に2分台でもいいんだ」と思ってからは、曲を作っていてもパーツとして足したいものがなければ、2分台で終わっちゃってもいいと思ってるんですね。
大島真帆(以下、大島):効率的というか、無駄なものは省いていくっていう浪岡の性格が、曲にすごく反映されてるなって感じますね。無駄なものが何ひとつないっていうのがPenthouseの特長だと思うし、そこは曲を書いている浪岡らしさのひとつなのかなとも思うんです。
大原拓真(以下、大原):他のメンバーも長い間奏とか、飽きがくるような構成が別に好きじゃないのかもしれない。
平井:僕は、本当はもうちょっと長い方が好きなんです(笑)。
一同:(笑)。
平井:「ナンセンス」で言うと、2番のサビの後にもうひと展開くらいあったほうが好きなんですね。ただ、サブスク全盛期だし、長くなっちゃうと途中で離脱しちゃうよねっていう話を、浪岡を中心にバンドの共通認識としてよくしているところもあって、どんどん短くなっていってる印象はありますね。
矢野:でも、曲が良ければいいじゃないっていうのがまずあるから、決して無理に短くしてるわけではないんですよ。
――美味しいところが凝縮されてると思います。最初の4小節でも、もうAメロが出てくるとか、アウトロなく歌で終わるとか。「ナンセンス」のアレンジはツインボーカルというアイコンをいい形でしっかり印象づけていると思いました。
大島:ありがとうございます。そのパターンです。
浪岡真太郎
サウンドの情報量に負けないボーカルの凄み
――ボーカルのために、サウンドを空けようみたいな考えはバンドとしてあるんですか?
矢野:あります、あります。基本、浪岡が作ってきたデモを聴いて、ここはボーカルで……みたいなのもわかるので、そこを汲み取って作っていきますから。
平井:だいぶシンプルになってはきたと思うんですけどね。でも、音数が多いっていうのはいまだに結構言われるんで、空けないといけないんだろうなと思っていますけど。
大原:難しいですよね、ここは歌に寄り添ってとか、たぶん各々やってはいるけど、でもなんか、シンプル過ぎるのも違う。
平井:うん、わかる。
大原:バトルしにいくじゃないですけど(笑)、ちょっとここはごちゃっとしていた方がいいってところは、(バンドも)みんな前に出て……ってパターンもありますからね。
矢野:パートによっても違うかもしれないですね。ベースとかは少し動いてもボーカルと喧嘩しにくいとか。逆にギターはボーカルと喧嘩しやすい帯域にいるから、どうしようって考えることも多い。
平井:そういう質問されるということは、やっぱり音数多いなと思ってらっしゃる?(笑)
――ははは。そうですね。多いなと思っていつつ、ボーカルのお二人が音数の多さをねじ伏せているというか。
一同:(笑)。
――この情報量が多いサウンドの上を軽々いっちゃうボーカルって、じゃあ次の展開ではどうなるの……みたいなのが、自分の中ではめちゃくちゃスリリングで。
一同:おぉ~、嬉しい。
大島:私はバンドっていうより、浪岡に負けない! みたいな気持ちが強いので。特に「ナンセンス」のサビは、浪岡の声の美味しい部分を存分に使っていると思うんです。1回聴いたら「何じゃこの声」みたいな感じになるだろう、と。「それに負けないように歌うには?」って考える。特にこの曲はメッセージも強いので、その強さをどう声で表現していくのかって、自分でも意識しましたね。
大島真帆
――中高音のトーンのニュアンスとか、浪岡さんに寄せているのかなと思いました。
大島:確かに。「ナンセンス」は珍しく準備する時間が結構あったんですよ。いつもはわりとレコーディングの直前に歌詞ができて、コーラスも含めて1〜2日前くらいに自分の歌うパートが送られてきて、その後すぐレコーディングになることが多いですけど、今回、1週間くらい練習できる時間があったんですよね。だから、デモの浪岡の声と自分の声を重ねて、発音とか発声とか、息を吸うところとかを全部書き出して、一緒になるように……とかはやりましたね。あとは、私(の歌)が出た時に、曲を聴いている人をがっかりさせないようにしなきゃいけないと思って。そのためには、自分はどう歌ったらいいんだろうっていうのを研究してレコーディングに臨めたっていうのは、すごく大きかったと思います。
Penthouse – ナンセンス[Official Music Video]
――今回、〈黙れ 黙れ〉の中の〈れ〉だけ一緒に歌ってますよね。この部分の歌割りにもびっくりで。ツインボーカルにしかできないじゃん、でもなかなか出てこないハモり方してる、と。例えばハーモニーグループとかでは、なかなかないと思うんですよ。
浪岡:確かに(笑)。歌詞の切れ目としては不自然と思うかもしれないですけど、曲的にはここで欲しいっていう。〈れ〉のベンドしながら上がっていくところとかは、ハモるとより印象的になりやすい。そういう風にしてハモりを考えることも多いですね。
――〈れ〉にクレッシェンドと厚みが欲しかったと。サウンド優先ということですね。
浪岡:そうですね。
平井辰典
――「ナンセンス」はサウンド面でロック色が強いとも感じました。
浪岡:そうですね。Penthouse史上、一番ロックな曲だと思います。歌詞的にもロックな内容だし、そういう温度になってるかなと。
平井:ドラムのサウンドもデッドじゃなくて、スネアだったらバーンって残響がしっかり感じられる音にしてますね。曲調じゃなく、楽器の音でロックっぽくなってるかなと思います。
矢野:確かに、ギターも今までで一番歪んでますし。
大原:ベースはパワフルに弾いてロックさを出しつつ、よりダンサブルな部分を補填してる感じですね。サビではコードの切り替えが細かいのもあって、細かいフレーズも入れてますし。ボーカルとどこまで寄り添うかというのもあったんですけど、今回は踊りやすい方を優先しました。