【ボクシング】大橋秀行会長、トラブル連続の井上尚弥の防衛戦に「ここまでくるのに一番苦しい興行でした」

囲み取材に応じる大橋ボクシングジムの大橋秀行会長 =横浜市西区(撮影・佐藤徳昭)

プロボクシングの4団体世界スーパーバンタム級(リミット55・3キロ)タイトルマッチ(24日、東京・有明アリーナ)の前日計量が23日、横浜ベイホテル東急で行われた。統一王者の井上尚弥(31)=大橋=と、代役で挑戦するWBO11位の金芸俊(32)=韓国=はともにリミットより100グラム軽い55・2キロで1回でパス。井上はサウジアラビア国営の国際娯楽イベントとの大型契約後初戦で圧勝し、海外でのビッグマッチへ向かうことを楽しみにした。

前日計量終了後に報道陣の取材に応じた大橋ジムの大橋秀行会長(59)は「今まで世界戦って多分、50試合以上やってるんですよね大橋ジムで。ここまでくるのに一番苦しい興行でした」と全10選手が無事に前日計量をクリアし、主催者として安堵(あんど)の表情を浮かべた。

当初は昨年12月24日に有明アリーナで、IBF、WBO1位のサム・グッドマン(26)=オーストラリア=の挑戦を受ける予定だったが、グッドマンが同14日に母国での最終公開スパーリング中に左目上をカット。4針縫う処置を受け、同日に興行自体の1カ月延期が発表された。同18日にはWBO世界バンタム級王者の武居由樹(28)=大橋=が練習中に負傷し、ダブル世界タイトルマッチとして行う予定だった2度目の防衛戦の中止を発表。さらに、今月11日の朝のスパーリングでグッドマンが左目上の裂傷を再発し、14針縫う処置を受けたため、試合を断念。挑戦者は同日、こちらも世界初挑戦となる金芸俊に変更となった。トラブルの連続で大橋会長はその都度対応に追われた。

男子の世界戦での日韓戦は2013年11月に韓国・済州でWBA世界バンタム級王者だった亀田興毅(亀田)が、挑戦者の孫正五(韓国)に2-1の12回判定勝ちして以来、約11年2カ月ぶり。井上はプロでは韓国選手と初対戦で、孤児院育ちの金芸俊は日本選手に7戦全勝と〝日本選手キラー〟だ。

現役時代に多くの韓国選手と対戦し、しのぎを削った大橋会長は「あんだけ強かった韓国がだんだんと強くなくなって。ちょうど10年前から日韓戦ってまたやりはじめて。(大橋ジム主催興行の)フェニックスバトル・ソウルもやりはじめて、徐々に韓国ボクシングも強くなってきて。今回、世界戦が日韓戦になりましたけど、これがきっかけでまた韓国が、これが起爆剤になって強くなっていければなおいいなと。ピンチはチャンス」と韓国ボクシング界の再興につながることを期待した。

大橋会長は井上を韓国にスパーリングやフェニックスバトル・ソウルの試合観戦で数回連れていっており、「韓流スターの人たちも『井上に会いたい』と言って、食事にも行ったりした」と井上の韓国での人気の高さを実感。「急に井上の相手が韓国選手ってことで、韓国の方も注目してくれると思います。いい試合になれば、またボクシングが強くなるきっかけになるんじゃないかなと思いますけど、大橋ジムの大橋会長としては(井上に)圧倒してほしい。井上らしいKO勝ちですよね」と複雑な心境で苦笑いした。

井上には「(対戦相手が直前で変更になっても)全然動揺している雰囲気もないし、淡々とやっていたんで、精神的な強さもある。普通は困惑するんだけど、キャリアがあるのでどんな相手がきても大丈夫。いろんな闘いをしてきているので、心配はない」と全幅の信頼を示した。

興行はNTTドコモの映像配信サービス「Lemino」で午後3時20分から独占無料生配信される。プロ戦績は井上が28戦28勝(25KO)、金芸俊が25戦21勝(13KO)2敗2分け。(尾﨑陽介)

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