14年11月、大橋秀行会長(中央)が日本プロボクシング協会の会長時代に開催を始めた日韓戦の選手と関係者(大橋ジム提供)
プロボクシング4団体統一スーパーバンタム級王者井上尚弥(31=大橋)が24日、東京・有明アリーナでWBO世界同級11位金芸俊(キム・イェシュン、32=韓国)との防衛戦に臨む。4団体統一王者として臨む3度目防衛戦は当初、昨年12月24日に東京・有明アリーナで予定されていたが、同14日に挑戦者のIBF、WBO世界同級1位サム・グッドマン(26=オーストラリア)がスパーリング中に左目上を裂傷。今月24日に同じ会場での延期が決まった。しかし今月11日にグッドマンが再び実戦練習中に左目上裂傷を再発して挑戦を辞退。井上陣営がリザーブとして契約していた金に白羽の矢が立った。
グッドマンのリザーブとして契約した金の写真を見た瞬間、井上所属ジムの大橋秀行会長(59)は約10年前、自ら手掛けた「日韓戦」の記憶がよみがえったという。日本プロボクシング協会の会長として韓国側と交渉し、14年11月に韓国のソウルで開催された日韓興行に金が出場していた当時を思い出した。大橋会長は「私がマッチメークした試合の選手だと。RK蒲田ジムの高林(良幸)選手とメインイベントで対戦し、勝利したのが金選手でした」と振り返る。
大橋会長は現役時代から韓国との「縁」がある。世界戦はWBC世界ライトフライ級王者張正九(韓国)に2度敗れたものの、WBC世界ミニマム級王者崔漸煥(韓国)に勝利して王座獲得。WBA世界同級王座を獲得した当時の王者も崔熙■(チェ・ヒヨン)(韓国)だった。同会長は「今回の興行延期、挑戦者変更という大変なタイミングで井上尚弥が日韓戦に臨む。そして挑戦者が私がマッチメークした試合に勝った金選手だったなんて、本当に運命」と感慨深げだ。
「韓国ボクシングにお世話になったから恩返ししたい」(大橋会長)と22年11月からは資金を投じ、韓国のThe Won Promotionsと共同開催で「フェニックスバトル・ソウル大会」をスタート。現在も定期的に開催し、韓国で初のWBOアジア・パシフィック王者も誕生するなど00年以降、低迷していた韓国ボクシングに復活の兆しが出てきた。
国内開催の世界戦で初の日韓戦は75年の輪島功一−柳済斗戦だった。初対決は輪島が敗れて王座陥落したものの、翌76年の再戦では不利予想の中で勝利。日本中が盛り上がり、中継したフジテレビの平均視聴率は42・5%をマークした。大橋会長が対戦した張やWBA世界ライトフライ級王者柳明佑ら韓国人王者が常に日本の「壁」として立ちはだかった。
日韓戦となれば常に激闘、熱い戦いが繰り広げらるケースが多い。井上−金戦は06年1月のWBC世界フェザー級タイトル戦(池仁珍−越本隆志戦)以来、19年ぶりの国内開催の日韓世界戦。大橋会長は「当時はコリアンファイターと言われ、闘争心や戦う魂はすさまじかった。日本人は誰も勝てなかった。5歳から孤児院で育ってハングリーな金選手には、少しその片りんはありますよ。でも大橋ジムの会長としては井上尚弥に圧倒してもらいたい」と期待を寄せていた。
※■は土ヘンに庸