「カッコいいところを…」 若林が振り返る、あの見せ場 別大マラソン

38キロ付近で激しく先頭争いをする若林宏樹(左)とビンセント・キプチュンバ=大分市で2025年2月2日、金澤稔撮影

国内マラソン史に残るであろう最終盤の猛追を振り返る若林宏樹の言葉は、驚くほど脱力感にあふれるものだった。

「正直、勝つのは無理だと思った。だけど最後のレースだから、カッコいいところを見せようと思って」

40キロ過ぎでトップのキプチュンバを一度抜いた時の感想だ。結果的に敗れはしたものの、その割り切りが、好走を生んだ。

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箱根駅伝の山上りの5区での活躍は、言わずと知れたところ。ランナーとしての特性と、コースの相性が抜群だった。

35キロ過ぎで、キプチュンバが仕掛けた。コースはここで上り基調になる。若林は、こともなげに語る。「(キプチュンバが)ペースアップしたけど『上りだからついていける、ラッキー』と思った」

レース前、青学大の原晋監督とは「2時間15分はかかるだろうな」と話していた。それと同時に、「30キロ以降は(先頭集団と)離れない」とも決めていた。想像以上に先頭集団の前方で走っていたことに気負いすぎなかったことも功を奏した。

初マラソン。フルマラソンに近い距離を走ったのも「(これまでの)人生で2回」という。しかし、箱根での山上りを想定したトレーニングを振り返り、「(フルマラソンより)もっときついことを4年間やってきた自信がある」とも言い聞かせた。

快記録は「これで引退」という、競技者として失うものが何もない状況での産物と言えなくもない。それでも、決して偶然の結果ではない。「陸上で学んだコツコツ努力することは(社会人になっても)生きると思う」

4月からの新生活で、その言葉を証明する。【岩壁峻】

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