これらの状況を受け、さすがに政治問題に関心が薄いと言われてきた日本人にも、危機感が広がっていると思われる現象が起きている。それは全国各地で行われている選挙の結果だ。 昨年11月24日に行われた名古屋市長選では、「自民党、公明党、立憲民主党、国民民主党の盤石の4党相乗り」の推薦を受けた大塚耕平氏が敗れ、減税を訴えてきた河村たかし前名古屋市長の後継指名を受けた元副市長、広沢一郎氏が勝利するという、「組織票の終焉か」とも見えるような《大番狂わせ》が全国に鮮烈な印象を与えた。 さらに今年に入ると1月26日に行われた埼玉県・川越市長選でも「自民、立憲民主、国民民主の与野党相乗り」候補の山根史子氏が落選。元裁判官で無所属の森田初恵氏が当選し、同様の衝撃を世間に与えた。 同日に行われた北九州市議選は、各党によって「今年夏に行われる参院選の前哨戦」と位置づけられる向きもあったが、自民や立民が退潮、無所属候補や国民民主が議席を増やし躍進する結果となった。
かつては「盤石」とされた既存政党の支援候補への逆風がいつになく強まっている――。 こうした情勢の中、2月2日投開票の千代田区長選挙について1月中に東京青年会議所、ReHacQ、ABEMAなどのネットメディアで候補者によるネット討論会が開催された。 「たかが1区長選に、これだけの注目が集まるのは異常なこと」であると「選挙ドットコム」は『番狂わせは起こるのか!?注目の千代田区長選を徹底解説!』で詳しく報じている。 これだけ千代田区長選が世間の大きな注目を集めている一因は、その「構図」だ。 一般的に首長選挙では現職が有利とされるが、現職で候補の樋口高顕区長は都民ファーストの副代表を務め「小池百合子都知事の側近中の側近」として広く知られている。無所属での出馬ながら、「都民ファースト・自民・公明・国民民主」各党の応援を受けていることが報じられており、これに無所属の候補たちが挑戦するという構図が名古屋市長選や川越市長選のケースが思い出されるのだ。 挑戦者の候補として特に注目されているのが、公認会計士で税理士の佐藤沙織里(さとうさおり)氏だ。その理由は登録者数約30万人を抱えるYouTuberでもあり、2月1日からはXでも数万件のポストとなりトレンド入り。「千代田区を日本一の減税特区に」と特別区民税の10%減税を公約に掲げ、実現可能である根拠も明解で説得力があること、さらに家庭では家計に苦労しながらも高校卒業後に公認会計士に合格、千代田区で富裕層や日本の権力層の世界でも活躍してきたその背景などが理由と考えられる。 また他3名の候補者も、区政の透明化や区民の生活向上などを訴え積極的な選挙活動を展開している。 また、「『減税』を公約に掲げるとよほど為政者たちに都合が悪いのか…」と思わせるような事態が現出していることもにわかに同選挙が注目され始めた理由だろう。前出の佐藤沙織里氏には各方面からの「妨害活動」「落選運動」がリアル、ネット両面で進行している状況が散見され、ゆえに世間の関心が高まっていると見られる。
千代田区は一方、「既得権益政治の一丁目一番地」であると表現されることも多い。昨年には区発注の工事を巡る官製談合事件が発覚し、区議と職員が逮捕。これについて週刊文春は1月29日、この元職員の実名告発やさらに別の職員の死に関するスクープを掲載。同区政の闇に触れている。 2025年、夏に東京都議選と参院選のダブル選挙が予定され、政治の変わる「選挙イヤー」としていつになく注目度が高まっている日本。地方選挙はその前哨戦として、その結果に関心が集まっている。 ……・・ 【つづきを読む】われわれ現役世代は「奴隷」なのか?「社会保険料」で《収入の3分の1が消滅》…「社会保障依存国家」日本の暗い未来
現代ビジネス編集部