パナソニックホールディングスは2月4日、2024年度第3四半期(2024年4月~12月)決算とともに、家電販売部門のパナソニック株式会社を2025年度中に発展的に解消することを含めたグループ経営改革を発表した。 【画像】パナソニック ホールディングス株式会社 代表取締役 社長執行役員 楠見雄規氏 重点投資領域にある、EV用車載電池などの事業を担当するエナジーの売上高については、前年同期比6%減の2149億円、調整後営業利益が120億円増の426億円となった。車載電池は、米ネバダ工場では、顧客の需要増により販売数量が拡大し、初めて四半期で10GWhに到達。さらに、第4四半期には、車載電池に対する需要が引き続き旺盛であることから、年間38.2GWの販売に達すると見込んでいる。だが、原材料低下見合いの価格改定などの影響によって減収となった。 パナソニックホールディングスの楠見雄規グループCEOは、「長期的な視点で見ると、EVの成長は以前に比べると鈍化はしているが、成長を続けている市場である。生産数量は、自動車メーカーとの連携で、需要にあわせた範囲でしか投資をしていない。成長が鈍化すれば、それにあわせた投資しかしないことになる。その点では、今後は、新規で大規模な投資はせずに、なだらかな投資を行うことになる」と説明。中期的な成長率が鈍化しても、収益性においては課題がないことを強調した。 また、パナソニックホールディングスの梅田博和グループCFOは、「パナソニックグループのEV向けビジネスは、現時点では、米国でしか行っていない。米国のEV市場は、なだらかに成長している。しかも、米国で最も強いメーカー(テスラ)と組んでいる点が安定化につながる」と、継続的にEV需要の増加に対応できる見通しを示した。 トランプ政権に移行し、米国内でのIRA(Inflation Reduction Act=インフレ抑制法)補助金の見直しの議論が進んでいるが、パナソニックホールディングスの梅田グループCFOは、「トランプ政権での拠出停止は、Section 30D と呼ばれる、消費者がEVを購入する際の補助金を対象としたものである。当社が対象となるEV向け電池などの販売に対する税控除である、Section 45Xは、中止するというコメントは、いまのところ出ていない。米国内にEV向け電池の製造拠点を持つことが対象になっており、多くの雇用を生みだすことに対する税控除でもある。Section 45Xは継続するという見込みではある」としたが、「トランプ政権のことなので、注視していかなくてはならない」ともコメントした。 仮に、Section 45Xも拠出中止の対象になった場合については、「実際に影響が出るのは、早くても数年先になる。生産拠点への投資のピークは2024年度で終わっていること、EVメーカーの裾野を広げていることなどから大きな影響はない」と述べた。 また、第3四半期は、カンザス工場および和歌山工場の立ち上げと、新規OEM向けの開発費などの先行費用が増加したことが、調整後営業利益にはマイナスに影響したという。 ■ グループ全体では、連結対象除外のパナソニックオートモーティブシステムズを除き増収増益に 一方、インフォテインメントシステムなどを取り扱うパナソニックオートモーティブシステムズは、Apolloへの株式譲渡が完了し、2024年12月から持分法適用会社となり、連結対象からは除外された。 2024年度第3四半期では、10月、11月の2カ月間の実績となり、売上高は前年同期比39%減の2108億円、調整後営業利益が108億円減の82億円となった。 パナソニックグループ全体の2024年度第3四半期(2024年10月~12月)の連結業績は、売上高が前年同期比1%減の2兆1526億円、営業利益は4%増の1323億円、調整後営業利益は19%増の1502億円、税引前利益は前年並みの1447億円、当期純利益は10%減の995億円となったが、「パナソニックオートモーティブシステムズが連結対象から外れたことで、全体の売上高は減収となったが、これを除くと増収増益である」(パナソニックホールディングスの梅田グループCFO)とした。 ■ グループ経営改革を発表、家電販売部門のパナソニック株式会社を2025年度中に発展的に解消へ パナソニックホールディングスでは、グループ経営改革について発表。今後、実現する姿として、ソリューション、デバイス、スマートライフの3つの領域から、注力分野と収益基盤に関する役割を設定したことを明らかにした。 ここでは、車載電池が、デバイス領域に含まれている。デバイス領域は、収益基盤に位置づけられ、同領域での調整後営業利益率は15%以上を目指すことになるという。車載電池の利益率向上は、今後の成長戦略のなかで重要な鍵になる。 パナソニックグループでは、2024年度を最終年度とした中期計画において、車載電池を重点投資領域のひとつに位置づけていたが、EV市場の成長鈍化により、収益力の確保が課題となっていた。だが、大規模な投資フェーズが終了したことで、今後は収益確保に取り組むことになる。 なお、今回のグループ経営改革においては、課題事業のひとつに位置づけているテレビ事業について、「売却を決定したわけではないが、売却する覚悟はある」(楠見グループCEO)としたほか、家電事業を担当しているパナソニック株式会社を、2025年度中に発展的に解消し、傘下にある分社を事業会社化および再編することを発表した。パナソニック株式会社の名称を残すかどうかについては、「まだ議論ができていない。具体的なことはこれから決める」とした。パナソニックグループのブランドを支えてきた家電やテレビにも、積極的に構造改革のメスを入れる姿勢を示した。 また、間接部門や販売部門を中心に業務プロセスを抜本的に見直す考えを示し、生成AIの活用やDXの徹底により、生産性を大幅に高めるほか、正味付加価値につながらない業務は廃止するという。製造部門や物流部門、販売拠点に関しては、統廃合によって効率化を図る計画も明らかにした。統廃合については、2025年度に方向付けを行い、2026年度までに完了させる予定だ。さらに、2025年度中には、本社および間接部門の人員の徹底最適化を進め、雇用構造改革も推進。2025年度中には早期退職者を募集することになる。 これらのグループ経営改革を通じて、2026年度には、1500億円の収益改善(2024年度比)を見込むほか、車載電池やBlue Yonderなどの先行投資領域における収益改善を加えることで、さらに1500億円の改善を見込むという。2028年度には、グループ全体の調整後営業利益で3000億円の改善を目指す。また、2028年度にはROEで10%、調整後営業利益10%以上とする新たな経営指標も掲げた。 パナソニックグループは、2024年度を最終年度とする中期計画において、3年間の累積営業キャッシュフローで2兆円、同じく3年間の累積営業利益では1兆5000億円、ROE10%以上という目標を打ち出したが、このなかで達成したのは累積営業キャッシュフローだけだった。 楠見グループCEOは、現在のパナソニックグループの状況を、「危機的状況」と表現。2025年度からスタートする予定だった次期中期計画を見送り、2025年度を経営改革に集中し、基盤固めを行う1年に位置づけている。 今回のグループ経営改革の実行により、構造を転換し、危機的状況からの脱却を図ることができるかが注目される。
Car Watch,大河原克行
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