パナソニックHDは、2月4日に開催したグループ経営改革に関する説明会をオンライン開催し、現在7つある事業会社を6つのグループに再編することを発表した。 その過程で「パナソニック株式会社」を2025年度中に解散する方針である。 「解散」というと衝撃的に聞こえるが、このこと自体は事業再編であり、問題ではない。その過程で家電事業が大きく変わる、という点にこそ注目すべきだ。 パナソニック株式会社は、家事家電などを中心とした「白物家電」を扱う事業体だ。テレビなどAV系を中心とした「黒物家電」を扱う事業体としては別に「パナソニック エンターテインメント&コミュニケーション社」がある。 パナソニックHDとしては、この2社の中で収益性が低い「課題事業」として、キッチンアプライアンス(調理家電)とテレビを挙げている。 実のところ、より厳しいのはエンターテインメント&コミュニケーション社、すなわちAV家電事業だ。 パナソニックといえば「テレビ」というイメージもあるかもしれないが、現在全グループ内での、エンターテインメント&コミュニケーション社の占める割合は3%程度にまで減っている。 そのため、以前より「パナソニックはテレビ事業を手放すのでは」との観測がある。 2月4日の説明会見で、楠見社長は「売却するかどうかについては、現時点でコメントできる状態にはなく、決定はしていない。(再建には)売却以外もある」と明言を避けた。 一方で「今、(パナソニックの)テレビ事業を売却しても、受ける企業はまずないと考えている」とさらに厳しい見方を示す。 楠見社長はテレビ事業に思い入れが無いのか、というとそんなことはない。 楠見社長は研究開発部門からキャリアをスタートし、テレビやレコーダー事業に関わり続けてきた。 2000年代前半はブルーレイ・ディスクの企画開発をリードし、2013年にはテレビ事業部長になり、その後も2018年までは、テレビ製品事業担当役員を担当している。 楠見氏のキャリアはAV機器とともにあり、思い入れも大きい。 「(自身が)テレビ事業をやってきたため、センチメンタルな部分はなきにしもあらず」と楠見社長は言う。 だが同時に「当社を高収益事業の塊にして行くには、事業のやり方を大きく見直していかねばならない」と言い切る。 パナソニックグループのトップとして、歴史も自身の思い入れもある事業に大なたをふるわねばならない、厳しい状況にあることを改めて表明した形だ。
西田宗千佳[ITジャーナリスト]
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