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日産自動車は5日、取締役会を開き、ホンダとの経営統合に向けて協議する方針を撤回した。ホンダが日産に対して子会社化を提案したことに、社内で反発が強まったためだが、ホンダとの経営統合という選択を自ら放棄した日産に再建の道は残されているのか。特集『日産 消滅危機』の#20では、日産が撤回に至った背景を明らかにするとともに両社の行方に迫る。(ダイヤモンド編集部 宮井貴之)
そもそも「対等合併」は日産の幻想…
決められない内田社長の下では提携も不発の恐れ
日産自動車は5日の取締役会で、ホンダとの経営統合に関する基本合意書(MOU)を破棄する方針を決め、6日、ホンダに伝達した。持ち株会社の設立を目指して昨年12月から協議を始めていたが条件が折り合わず、計画はわずか1カ月半で頓挫した。
電気自動車(EV)の開発に向けた協議は続くが、両社の経営陣の間で不信感が高まった今、EVでの協業さえも解消となる恐れがある。
5日の東京株式市場では、経営統合協議の撤回の報道を受けて日産株は前日比4.9%下落した。6日は買い戻す動きが広がり4日の終値を上回る場面があるなど不安定な動きが続いている。
三菱UFJ eスマート証券の山田勉マーケットアナリストは「(破棄により)日産が存続する可能性が低くなった。経営陣の刷新を含めた新たな再建案を示せない限り、株価は低迷し続けるだろう」と分析した。
統合に向けた協議が破談になった背景には、ホンダが日産に子会社化を迫ったことがある。
ホンダは、株主や従業員をはじめとしたステークホルダーからの信用を失わないためにも、日産に統合の条件として自主的な経営再建を要求。ただ、日産は日本国内や米国など一部の工場のリストラ計画案の骨子を示したものの、ホンダを納得させることができず結論は2月中旬まで持ち越しとなっていた。
経営再建に向けた抜本的な構造改革を行う覚悟を示さない日産にしびれを切らしたホンダが示した案が子会社化だった。子会社化すれば構造改革を含めた統合の協議をスピーディーに進められると考えたのだ。だが、子会社化の提案は、対等な立場での統合を考えている日産の反発を招き、破談に至った。
あるホンダ幹部は子会社化を提案したことに関して、「社内でも賛否両論あったが、10年後の両社の将来を考えたときに子会社化が最適だと判断して提案した。日産はホンダが強硬策に出たと思っているのかもしれないが、われわれにとっては必然だった」と振り返る。
統合が実現すれば、世界3位の巨大グループが誕生するはずだった。統合の道が断たれた今、両社は生き残ることができるのか。次ページでは、協議破談の代償と待ち受けるいばらの道に迫る。