日米首脳会談見守る株式トレーダー、防衛・エネルギー株の行方に注目

石破茂首相が7日にトランプ大統領と会談するのを前に、株式市場のトレーダーらは巨額の貿易赤字を抱える米国が関税政策で強硬な姿勢を取ることを警戒しつつ、防衛・エネルギー関連株の行方に注目している。米国が日本に追加の防衛費支出を迫る可能性があるためだ。

日本は今のところトランプ関税の脅威から外れており、首脳会談は「エネルギーや防衛の話題が中心となり、日米の絆を深めることになるだろう」と香港のレイリアント・グローバル・アドバイザーズのポートフォリオ・マネジメント部長、フィリップ・ウール氏は話す。

ただ、トランプ大統領が対日貿易赤字を問題視して円安是正を求めることはあり得る。同氏は第一次トランプ政権でも日本と中国が自国の通貨を切り下げていると非難していた。ドル・円は現在1ドル=151円台と、第一次政権時の平均109円付近から大幅な円安・ドル高に振れている。

ブラックロック・ジャパンの地口祐一チーフ・インベストメント・ストラテジストは、日本銀行の利上げ観測が強まっていることもあり、トランプ大統領の発言次第で148円台まで円高が進む可能性があるとの見方を示した。

トランプ・石破会談で注目すべきテーマと関連銘柄は以下の通り。

防衛およびAI

北大西洋条約機構(NATO)加盟国にGDP比5%の防衛費拠出を主張したトランプ氏が、日本に対して防衛関連の支出増額を求める可能性がある。「日本が防衛費の増額や米国製装備品の追加購入に踏み切れば、三菱重工業などがメリットを受けるだろう」と、豪ペッパーストーングループのストラテジスト、ディリン・ウー氏は述べた。

三菱重、川崎重工業IHIといった防衛関連企業の株価は2024年に2倍以上になり、東証株価指数(TOPIX)の18%高を大きくアウトパフォームした。

人工知能(AI)投資もトランプ大統領が重視する分野だ。トランプ氏は就任早々、ソフトバンクグループオープンAIオラクルが主導する初期投資額1000億ドル(約15兆5700億円)のAIインフラ計画を発表した。リバー・グローバル・インベスターズのグローバル株式アナリスト、アレックス・スタウト氏は日立製作所などがAIと連携したエネルギー伝送から恩恵を受けるとみる。

エネルギー、海運

石破首相はエネルギーの安定供給を米国側に求める考えで、シェールガスなど米国産化石燃料の輸入拡大を取り上げる可能性がある。

実現すれば、「電力株や液化天然ガス(LNG)船など海運株にポジティブに働く」とT&Dアセットマネジメントの浪岡宏チーフ・ストラテジストは指摘した。

自動車

貿易問題は自動車など輸出関連株に大きな影響を与える。GAMAアセット・マネジメントのグローバルマクロ担当ポートフォリオマネジャー、ラジーブ・デメロ氏は輸出依存度が高い自動車と製薬業界の動向を注視。ブルームバーグのデータによると、自動車メーカーのSUBARUは収益の約73%を米国で稼いでいる。

KCMトレードのチーフ市場アナリスト、ティム・ウォタラー氏は「トランプ氏が日本からの輸入品に対して強硬な姿勢を取れば、日本の自動車メーカーがその標的になる可能性がある」とみる。トヨタ自動車の株価は、トランプ氏がカナダとメキシコへの追加関税発動に関する大統領令に署名したことで2月初旬に5%下げたが、その後の発動延期で値を戻した。

日鉄とUSスチール

石破首相とトランプ大統領の会談で、バイデン前大統領によって阻止され、訴訟に発展した日本製鉄が提案しているUSスチールの買収を巡りコメントがあるかどうかも注目点の一つだ。事情に詳しい複数の当局者によると、 トランプ氏は6日、USスチールのデービッド・ブリット最高経営責任者(CEO)と会談した。

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *