チャンピオンズリーグ(CL)リーグフェーズ第7節。現地時間1月21日に行なわれた9試合に、日本人では南野拓実(モナコ)と遠藤航(リバプール)のふたりが出場した。 16位のモナコ(勝ち点10)対5位のアストン・ビラ(勝ち点13)。モナコの…
チャンピオンズリーグ(CL)リーグフェーズ第7節。現地時間1月21日に行なわれた9試合に、日本人では南野拓実(モナコ)と遠藤航(リバプール)のふたりが出場した。
16位のモナコ(勝ち点10)対5位のアストン・ビラ(勝ち点13)。モナコのルイ2世スタジアムで行なわれたこの一戦に、南野は4-2-3-1の1トップ下でスタメン出場を果たした。
決勝トーナメントにストレートインするためには8位以内、プレーオフに進出するためには24位以内。モナコにはリーグフェーズの残る2試合で2連敗すると24位に入らない可能性があった。最終戦の相手は一昨季のファイナリスト、インテルだ。アストン・ビラとのホーム戦は、絶対に負けられない正念場となった。
モナコは立ち上がりから積極的に仕掛けた。そして開始8分、結果を出す。CKからティロ・ケーラー(ドイツ代表)がヘディングを枠内に飛ばす。相手GKエミリオ・マルティネス(アルゼンチン代表)が弾き返すが、ウィルフリード・シンゴ(コートジボワール代表)がこれを押し込み、幸先よく好スタートを切った。
だが、モナコは実力上位のアストン・ビラに次第に押し込まれ、耐え忍ぶ時間が増えていく。GKラドスワフ・マイェツキ(ポーランド代表)が好セーブを連発。前半のアディショナルタイムに入った47分に見せた超美技はその極めつけだった。アストン・ビラのCFオリー・ワトキンス(イングランド代表)が近距離から放ったシュートを枠外に弾き出したプレーである。
同点、逆転は時間の問題かに見えた。
南野がこの日一番の見せ場を作ったのはその直後だった。時計の針は3分というアディショナルタイムを超え、まさに前半のラストプレーだった。モナコの左SBクリスティアン・マウィッサ(U-21フランス代表)が、ダメもとで最前線めがけてロングボールを蹴り込んだ。
南野はそこに張っていた。相手の両CB、エズリ・コンサとタイロン・ミングス(ともにイングランド代表)に挟まれながらも、バウンドして浮いた球を左足で処理。リフティングをまじえながら低重心でボールをキープし、右脇を走るマグネス・アクリウシェ(U-21フランス代表)にラストパスを送った。
【モナコもプレーオフ進出を決める】
ダメもとのロングパスから南野は、マクリウシュに決定的チャンスをお膳立した。ところがそのシュートは枠外に外れてしまう。ほぼ左足だけでプレーするマクリウシェ、用いることになったのは不運にも右足だった。前線でボールをキープしながら、チャンスをうかがった南野のプレーがよすぎた分だけ、その右足シュートには落胆させられることになった。
南野にも決定機が訪れた。後半19分。右SBバンデルソン(ブラジル代表)の縦パスを受けた瞬間、南野は相手GKと1対1になった。
アストン・ビラが同点弾を狙って前掛かりになると、南野は1トップ下の位置からより高い位置に出ていき、相手の最終ラインの背後を突く動きを見せていた。この直前にも、味方選手が南野の動きに気づいていれば決定的チャンスに、というシーンがあった。
だが、後半19分の場面では、パスが実際に回ってきたにもかかわらず、南野は最終ラインの背後を抜けたところで、弱気にも切り返した。そのボールが身体からわずかに離れたところを相手に狙われ、奪われることに。推進力不足を露呈させることになった。
モナコは結局、アストン・ビラを振りきり、勝ち点3を獲得。勝ち点を13に伸ばし、最終節のインテル戦を待たず、プレーオフ進出圏内である24位以内を決めた。南野は後半33分までプレー。採点するならば10段階で6.5といったところか。
リール戦の後半18分から出場、勝利に貢献した遠藤航(リバプール) photo by AFLO
リーグフェーズ第6節を終えた段階で首位を行くリバプールは、ホームでリール(8位、勝ち点13)と対戦した。引き分け以上でベスト8が決まるリバプールにとっては事実上、消化試合に近い。スタメンにCBのジャレル・クアンサー(U-21イングランド代表)、右SBのコナー・ブラッドリー(北アイルランド代表)の名前があっても、特に驚くことはなかった。両者はこれまで出場機会に恵まれていなかった選手である。
だが、その出場時間は、遠藤のプレミアリーグでの今季通算出場時間(54分、アディショナルタイムを含まず)より長い。フィールドプレーヤーで遠藤が勝るのは、フェデリコ・キエーザ(イタリア代表、21分)、ハーベイ・エリオット(U-21イングランド代表、51分)のふたりに限られた。
遠藤の出場は後半18分からだった。ちなみにエリオットは後半の頭から出場し、キエーザは後半29分からの出場だった。終盤のピッチには、これまで出番に恵まれなかった選手が数多く立つことになった。
試合が動いたのは前半34分。カーティス・ジョーンズ(イングランド代表)の縦パスを受けたモハメド・サラー(エジプト代表)が鮮やかなシュートを決め、リバプールが先制。後半、リールは退場者を出し10人になったが、その直後、ジョナサン・デイビッド(カナダ代表)のゴールでリールが同点に追いつくという、まさかの展開になった。
遠藤がピッチに登場したのは同点弾を浴びた直後だった。交代は失点の前から予定されていたので、逃げきりを図る意図が強かったと思われる。したがって、攻撃より守備のほうが持ち味を出せそうな遠藤にとって、おあつらえ向きの展開とは言えなかった。
だがその5分後、リバプールはCKからエリオットのゴールで勝ち越しに成功する。リバプールのペースは加速すると思われた。だが、リールは10人となり、リードを許してもくじけなかった。いつもより落ちるメンバーで戦うリバプールと互角に撃ち合った。
南野が所属するモナコより、リールは数段、強く見えた。リーグフェーズでレアル・マドリード、アトレティコ・マドリードを倒した理由を垣間見た気がした。強度が高く、攻撃的かつ頭脳的。決勝トーナメントを賑やかす存在になると見た。
遠藤にはその分、活躍の機会が回ってきた。相手が10人になっても守らず、前に出て来たため、本領を発揮しやすい条件が整った。実際、パスカットを遠藤は3度ほど決めている。そのパスカットから、カウンターでサラーが相手GKを強襲する後半33分のシーンはその象徴と言えた。
相手のプレッシャーを受けながらも、ボール操作はノーミスに近かった。また、エリア内に向かってドリブルで突進を図った後半43分のシーンでは、反則で止めた相手にカードが出されることになった。贔屓目抜きに、国内リーグで通算54分しかプレーしていない選手には見えなかった。
リバプールはこの試合を2-1で逃げ切り、この日、ベンフィカに逆転勝ちしたバルセロナとともに、ベスト8以内を確定させた。またアトレティコ、アタランタ、アーセナル、レバークーゼン、インテル、アストン・ビラ、それにモナコとリールの8チームも、最低でもプレーオフ進出を決めた。
決勝トーナメントのピッチに立つことになる日本人選手は何人を数えるか。ひと口にチャンピオンズリーガーと言っても、リーグフェーズで消える選手とではステイタスが違う。その”出世争い”に目を凝らしたい。