文化庁は4日、地域の文化財をストーリー(物語)にまとめて発信する「日本遺産」事業で、「古代日本の『西の都』~東アジアとの交流拠点~」(福岡県太宰府市、佐賀県基山町など5市2町)を、認定後の取り組み不足のため認定地域から除外し、「候補地域」に格下げしたと発表した。認定の除外は、2015年の制度創設以来初めて。
「西の都」構成地域の一つである大宰府政庁跡(2015年、福岡県太宰府市で、読売ヘリから)
「西の都」は15年に認定された。古代日本の軍事、外交拠点だった大宰府政庁跡を中心に、太宰府天満宮や大野城跡、水城跡など30の文化財で構成し、1300年前の古代国際都市を体感できるとしていた。
21年度には、取り組みが審査される「条件付き認定継続」とされ、今回、有識者会議が観光事業化や、組織整備の状況を評価した。その結果、太宰府天満宮など集客力の高いエリアから、他の構成文化財へ周遊させる方策に対する評価が低く、自治体間の連携不足、民間のリーダーの不在、住民の認知度不足なども指摘された。
「西の都」は今後、日本遺産を対象とした補助金申請ができなくなり、日本遺産のロゴマーク入りのチラシなども新たに作成できない。26年度以降に認定を再申請できる。
一方、新規認定を目指していた「北海道の『心臓』と呼ばれたまち・小樽~『民の力』で創られ蘇った北の商都~」(北海道)の認定が決まった。
「アピールしていくことに尽きる」
「西の都」が日本遺産の認定地域から除外され、地元関係者は複雑な思いを明かした。
福岡県文化財保護課によると、観光振興を企画する地域コーディネーターを置くなど改善を図っていたという。担当者は「残念だが、文化財の価値が失われたわけではない。指摘を分析し、反省すべきところを反省したい」と述べた。今後について、県や市町村、民間事業者で構成する協議会で検討する。
同県太宰府市の楠田大蔵市長は「日本遺産であろうとなかろうと、太宰府天満宮や元号『令和』との縁などで市の知名度は高く、誇りを持っている。しっかりとアピールしていくことに尽きる」と話した。