【コラム】道に迷う日産、ホンダと破談なら立ち往生-リーディー

行き先は分かっていると頑固に言い張るものの、結局は道に迷ってしまうドライバーのように、日産自動車はプライドにとらわれているのかもしれない。

5日の報道によると、日産はホンダとの経営統合に向けた基本合意書を撤回する方針を固めた。両社が合併に向けた協議を正式に開始してからわずか1カ月余りのことだ。

行き詰まりの原因は、ホンダの時価総額が日産の5倍余りと差があるにもかかわらず、日産が対等な合併を要求したことにあるようだ。 一方、ホンダは日産を子会社化することを提案したと報じられている。表向きは、経営難の日産の再建を早めるためだ。この提案は、第1次世界大戦前にさかのぼるルーツを持つ日産の経営陣には受け入れがたいものだった。

ホンダが合併を押し付けられたのではないかとの疑念を抱くには十分な理由があった。両社は「グローバルな競争力を維持する」ために統合が必要であり、世界3位の自動車メーカーが誕生すると主張していた。しかし、ホンダの三部敏宏社長は昨年12月に日産との統合のどこに魅力を感じたのかと問われた際、「難しい質問だ」と答えに窮し、ぎこちない笑いを禁じ得なかった。

かつて日産の最高経営責任者で後に逃亡犯となったカルロス・ゴーン氏を含む多くの人が、日本の象徴的な企業が誤った手に渡るのを防ぐために、経済産業省が動いていると感じた。特に、外国からの関心が浮上した際にはそうだった。両社は5日、報道の事実も含めてさまざまな議論を進めている段階だとし、合併の可能性に希望を残した。しかし、撤回を巡って協議しているのは事実だと認めた格好だ。

ホンダの三部氏は12月の記者会見で、長い間迷った末に、日産の長い歴史と伝統を強調する答えにたどり着いた。近年、日産の主な伝統と言えば、投資家を失望させることだった。筆頭株主であるルノーとの統合深化協議や電気自動車(EV)化など、失敗した取り組みは数々ある。

ゴーン氏のコスト削減策により、日産はEVとハイブリッド車の両方において研究開発で出遅れていた。ホンダよりも日産の方が、この統合を格段に必要としていた。来年に数十億ドルの負債の返済期限が迫る中、日産はさらに不利な取引を強いられる可能性もある。(台湾の鴻海精密工業が日産の経営権取得に関心を示しているとの報道を思い出してほしい。鴻海は「iPhone(アイフォーン)」を生産するように自動車も製造することを目指し、日産の製造拠点を傘下に収める意向だ)。エフィッシモ・キャピタル・マネージメントなどのアクティビスト(物言う投資家)も、このニュースを喜ばないだろう。アクティビストは欲しいものを手に入れるまで、取締役会を悩ませるような行動をとるという前歴がある。

ホンダ株はこのニュースを受けて急伸した。経営不振の日産との合併の可能性が浮上して以来、投資家を落胆させてきたためだ。しかし、喜ぶのはまだ早いかもしれない。ホンダも成功を収めるには成長する必要がある。5年連続で世界首位となっているトヨタ自動車が空前の利益予測をさらに上方修正したのと同じ日に、この報道が流れたことも皮肉だった。

日本の合併協議では、特にプライドの高い小規模企業側が不運に見舞われている場合、条件で折り合いがつかないのは珍しくない。しかし、メンツを保つために苦渋の決断を先延ばしにするのは、多くの日本企業にとって、ましてや自動車業界のように急速に変化する業界においては、良い結果をもたらしたことはない。

単なる瀬戸際戦術に過ぎないのかもしれない。そして、状況が好転する可能性もゼロではない。過去に実現しなかった合併、例えば、統合観測が流れた三菱重工業と日立製作所は必ずしも破滅的な結末を迎えたわけではない。両社はそれぞれ独自に業務改革を行い、現在ではかつてないほど業績を伸ばしている。

しかし、道を間違った後、同じ道をさらに進むことは窮余の一策にはほとんどならない。たいていは、プライドを捨てて過ちを認め、助けを求めるのが最善策だ。

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(リーディー・ガロウド氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストで、日本と韓国、北朝鮮を担当しています。以前は北アジアのブレーキングニュースチームを率い、東京支局の副支局長でした。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:Scrapping Honda Deal Would Leave Nissan Stranded: Gearoid Reidy(抜粋)

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