【記者の目】イチロー氏、満票ならず…投票資格者は誇りと責任を

野球殿堂入り通知式で話すイチロー氏=野球殿堂博物館(代表撮影)

2025年野球殿堂入りが16日、東京都内の野球殿堂博物館で発表され、プレーヤー表彰で日米通算4367安打のイチロー氏(51)=マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター=が選出された。史上初の満票こそ逃したものの、資格1年目での殿堂入りは7人目。阪神大震災発生から30年を前に、野球人にとって最高の栄誉を手にした。21日(日本時間22日)の米国野球殿堂入り発表でも日本選手初の選出が確実視される。

資格1年目でのイチロー氏の殿堂入りは当然のこととして、意外だったのは歴代6位となる得票率92・6%だ。開票前は史上初の満票が期待されていたが、ふたを開ければ有効投票数349のうち323票。つまり、26人が日米で別格の実績を誇る同氏に票を投じなかったことになる。

これには王貞治氏は「中には〝へそ曲がり〟もいるんだよ」と不快感を示し、「アメリカの(殿堂の)方がもっともっといい形で投票されるんじゃないか」と話した。事実、米トラッキングサイト「Baseball Hall of Fame Vote Tracker」では開票率が40%を超えても、いまなお満票を維持していると伝えられている。

イチロー氏が日本球界で最後にプレーしたのは2000年で、「間が空き過ぎているということもあるのではないか」と指摘する球界関係者もいる。プレーヤー部門の投票は野球報道に関して15年以上の経験を持つ委員によって行われる。つまり、同氏の日本での活躍の印象が薄い委員も存在する。

米国殿堂では20年に元ヤンキースのデレク・ジーター氏が満票に1票足りなかったことで、投票しなかった人物を探す〝魔女狩り〟が始まった。全米野球記者協会に10年以上所属する記者が投票権を持つ中、同協会は野球殿堂にどの記者が誰に投票したかを完全公開する提案をしたが、殿堂側は匿名性こそが個人の自由意思を保障するものとして拒否した経緯もある。

日本では昨季のパ・リーグMVP投票で、歴史的最下位に沈んだ西武から源田に1票を投じた記者がいた。投票資格者が誇りと責任を強く持つ以外にはなさそうだ。(編集委員・東山貴実)

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *