日本新記録を樹立し3位になった太田(55)(トヨタ自動車)と日本学生新記録で4位になった篠原(駒大)=丸亀市内
女子で日本勢トップの5位に入った加世田(ダイハツ)=Pikaraスタジアム
男子優勝のムティソ(53)(NDソフト)=Pikaraスタジアム
女子で2連覇したオマレ(ユニクロ)=Pikaraスタジアム
夢の59分台、一気に2人誕生―。第77回香川丸亀国際ハーフマラソン大会(四国新聞社など後援)最終日は2日、メインのハーフマラソンが丸亀市金倉町のPikaraスタジアム発着コース(21・0975キロ)で行われ、男子は太田智樹(トヨタ自動車)が59分27秒の日本新記録で3位に入った。従来の日本記録(1時間0分0秒)を33秒も更新し、日本人で初めて60分切りを達成した。4位の篠原倖太朗(駒大)も59分30秒で続き、日本学生新記録をマークした。 男子はアレクサンダー・ムティソ(NDソフト)が59分16秒で2年ぶりに優勝し、女子はドルフィンニャボケ・オマレ(ユニクロ)が1時間6分5秒で2年連続で頂点に立った。2人は自身が持つ大会記録をそれぞれ更新した。女子の日本勢トップは加世田梨花(ダイハツ)で1時間7分53秒で5位に入った。 男子の太田と篠原は外国人勢と先頭グループで走り、序盤から日本記録を大幅に上回るペースでレースを進めた。15キロ地点の通過タイムは日本記録より31秒速かった。17キロ過ぎでムティソらから遅れたが、2人で競り合い、最終盤に太田が篠原を振り切った。 今回から併催された男子の日本学生ハーフマラソンは工藤慎作(早大)が1時間0分6秒で優勝した。全体でも5位の好記録だった。 日本新の太田は500万円、日本学生新の篠原は100万円、大会新の男女優勝者は各300万円のボーナス賞金が特別協賛の四国化成ホールディングスから贈られた。 ▽男子 (1)アレクサンダー・ムティソ(NDソフト)59分16秒=大会新(2)マル・イマニエル(トヨタ紡織)59分19秒(3)太田智樹(トヨタ自動車)59分27秒=日本新(4)篠原倖太朗(駒大)59分30秒=日本新、日本学生新(5)工藤慎作(早大)1時間0分6秒(6)馬場賢人(立大)1時間0分26秒(7)アンドリュー・ブキャナン(豪州)1時間0分28秒(8)ジェームス・ムトゥク(山梨学院大)1時間0分30秒 ▽女子 (1)ドルフィンニャボケ・オマレ(ユニクロ)1時間6分5秒=大会新(2)キャリ・ハウガータッカリー(英国)1時間6分58秒(3)イゾベル・バットドイル(豪州)1時間7分17秒(4)カムル・パウリンカベケ(ルートインホテルズ)1時間7分33秒(5)加世田梨花(ダイハツ)1時間7分53秒(6)ドミニクスコット(南アフリカ)1時間8分22秒(7)川村楓(岩谷産業)1時間8分58秒(8)川内理江(大塚製薬)1時間11分17秒 【日本学生ハーフ】 (1)工藤慎作(早大)1時間0分6秒(2)馬場賢人(立大)1時間0分26秒(3)上原琉翔(国学院大)1時間0分30秒(4)帰山侑大(駒大)1時間0分32秒(5)吉中祐太(中大)1時間0分45秒(6)近田陽路(中央学院大)1時間0分45秒(7)青木瑠郁(国学院大)1時間0分47秒(8)辻原輝(同)1時間0分51秒 ◎太田、世陸へ弾み 1時間の壁越え「自信に」 早春の讃岐路でとんでもない記録が飛び出した。パリ五輪1万メートル代表の太田(トヨタ自動車)が、日本記録を一気に33秒更新する59分27秒をたたき出して3位。これまで日本人の前に立ちはだかっていた“1時間の壁”を乗り越えた27歳は「日本人で初めて60分を切れたことはこれからの自信になる。多くの方に期待していただいていたのでほっとした」と胸をなでおろした。 スタートからハイペースで走る外国人選手らと共に先頭集団を形成し、日本記録更新ペースを維持。17キロ過ぎからは篠原(駒大)と一騎打ちの日本人トップ争いとなったが、残り1キロを切ったところで驚異のラストスパートをかけ、3秒差で振り切った。 昨夏、篠原と一緒に練習をしていたという太田は「負けたくないし、負けちゃいけない相手」と対抗心を燃やして臨んでいた。18キロ付近では篠原が少し前に出る場面があり、「本来は自分が引っ張らないといけないところ」と反省しつつ、気持ちを切り替え「勝負に徹した」。そして、激しいつばぜり合いを制し、両手を大きく広げてゴールに飛び込むと、「タイムは勝負の後についてくるもの。しっかり勝ち切れてよかった」と笑顔を見せた。 今後は、18年ぶりに国内で開催される「9月の世界陸上(出場)をトラック(1万メートル)で狙いたい」と太田。パリ五輪では大会前にけがをして万全な状態で臨めずに悔しい思いをしたといい、「今回、出場できれば万全の準備をしてトップの選手と勝負したい」と闘志を燃やしていた。 ◎篠原(駒大)学生新も悔しさ 有言実行、丸亀から世界へ 「学生最後に選んでよかった」 篠原(駒大4年)は、前日会見で宣言した59分台を達成したが、太田(トヨタ自動車)に3秒差で敗れ、「太田さんに勝ちたかった。勝負に負けてすごく悔しい気持ち」と、ゴール後は声を上げて地面をたたいた。 太田は昨年夏に練習を共にし、その強さを肌で感じていた存在。それでも「夏ほどの差はなくなった」と15キロ過ぎから積極的に仕掛けた。だが、いずれも対応され、「ラスト勝負になると差が出てしまった」と日本人トップの座を逃した。 篠原にとって丸亀ハーフは「思い入れのある大会」。初出場した2年前は日本人学生最高記録をマークし、飛躍のきっかけを与えてくれた。今回もそうだ。「大学最後のレースに選んでよかった。(9月の)東京の世界陸上を5000メートルで狙う」。今春、富士通に進む22歳は、丸亀から世界へ羽ばたく決意を示した。 ◎女子日本人トップ 加世田(ダイハツ)5位 再起への一歩に 「目標クリアできた」 女子日本人トップの加世田(ダイハツ)は1時間7分台の自己ベストをマークした。昨年のパリ五輪代表を逃して以降、心身ともに苦しんだ1年を乗り越えてつかんだ好走に、「丸亀をまた新たなスタートにする走りができた」と笑みを浮かべた。 昨年3月の名古屋ウィメンズマラソンで4位に終わり、パリ五輪出場の夢が消えた。喪失感は大きく、「フォームなど体が崩れ、そこから心も崩れた」。陸上から離れていた時期もあったほど「苦しい1年を過ごしてきた」と涙を浮かべて振り返る。 それでも、トレーナーや先月結婚を発表した夫の小林歩(NTT西日本)らの支えで再び走り始めた。今大会は小林も出場しており、初めて一緒に走るレースに。スタート前には「頑張ろうね」と声をかけ合ったそうで、「目標の(1時間)7分台をクリアできた。いい報告ができる」と笑った。 3月には因縁の名古屋ウィメンズが控える。「支えてくれた人たちのためにも名古屋で世界陸上の切符をつかみ、世界陸上でもしっかりいい走りがしたい」。25歳が丸亀で力強く再起への一歩を踏み出した。 ◎ムティソ大会新V 終盤抜け出す 男子 オマレは2年連続 序盤から独走 女子 男子はムティソ(NDソフト)、女子はオマレ(ユニクロ)が共に自身の持つ大会記録を更新して優勝。2年ぶりに王座を奪還したムティソは「目的を達成できてすごくうれしい」と声を弾ませ、2年連続女王の座に就いたオマレも「大変だったが良かった」と笑みを浮かべた。 ムティソは序盤からトップ集団につけ、終盤は2位の選手との一騎打ちに。競技場前でスパートして引き離し「プラン通りにいった」と胸を張った。
オマレは序盤から飛ばして一人旅。中盤以降はペースが落ちたが「(20キロ付近で)時計を見て記録更新も何とかなると思って、最後は頑張れた」と振り返った。