【ワシントン=淵上隆悠】米国の首都ワシントン近郊にあるレーガン・ナショナル空港付近で29日夜に起きたアメリカン航空の旅客機(乗客乗員64人)と米軍ヘリ(乗組員3人)の空中衝突事故で、米CBSニュースは30日、少なくとも40人の遺体が発見されたと報じた。墜落現場のポトマック川から飛行記録などを収めた「ブラックボックス」が回収されたといい、事故原因の調査も本格化している。
30日、カンザス州ウィチタで、墜落事故の犠牲者のために祈りをささげる夫婦=AP
トランプ大統領は30日、ホワイトハウスでの記者会見で、「残念ながら生存者はいない。米国の歴史にとって、暗く耐えがたい夜になった」と語った。旅客機には米国人以外にロシアなど他国籍の乗客もいたと明らかにした。在米日本大使館は、日本人が搭乗していたかどうかの確認を続けている。
事故原因の調査に当たる国家運輸安全委員会(NTSB)のジェニファー・ホメンディ委員長は30日の記者会見で、「事故に関与したすべての人、旅客機とヘリの機体、運航の環境を調べる」と述べた。ポトマック川に墜落した旅客機の機体は大きく三つに分裂しているという。NTSBの別の委員は、機体の残骸から脱出用シューターが展開された形跡が見られないことから、「(衝突から墜落まで)非常に早く、急激だった」との認識を示した。NTSBはブラックボックスの分析を急いでいる。
衝突事故の主な経緯
事故が起きた状況を巡っては、様々な見方が広がっている。ヘグセス国防長官は30日の記者会見で、夜間飛行の訓練中だったヘリ側に「ミスがあった」との認識を示した。「飛行高度の問題」があったと指摘し、再発防止に向けて徹底的に調査すると強調した。一方、陸軍幹部は米メディアに、ヘリの乗組員は「非常に経験豊富」で、飛行ルートも熟知していたと説明した。
30日、米ワシントン近郊のポトマック川で、航空機などの残骸の回収が行われた=ロイター
米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は30日、入手した連邦航空局(FAA)の内部資料をもとに、事故当時、本来は管制官が2人態勢で行うべき業務を1人で対応していたと伝えた。資料は、時間帯や運航量からみて人員配置が「普通ではなかった」と指摘しているという。
トランプ氏は、バイデン前政権下で、FAAが管制官などを採用する際に、能力よりも多様性を重視したことが事故につながったとの持論を展開した。記者から「どうしてそう言い切れるのか」と問われると、トランプ氏は「私には常識があるからだ」と応じた。