日産自動車は5日午後にも取締役会を開き、12月に発表した共同持ち株会社設立を巡るホンダの提案を拒否する方向だ。事情に詳しい関係者が明らかにした。
関係者によると、ホンダは最近日産に対して、同社の株式を取得して子会社化する案を提示。日産は同案について検討を重ねてきたが反対意見が多く、5日開かれる予定の取締役会で受け入れ拒否を決める可能性が高いという。
両社は昨年12月、共同持ち株会社を設立する方向で検討に入ると発表。2026年8月の上場を予定し、ホンダと日産の両社は上場廃止とした上で傘下に入るとしていた。両社は統合準備委員会で協議を進めていたが1月に入って日産が大株主の三菱自動車が合流を見送る方向で調整に入ったとの報道などがあり、 当初は1月末をめどに発表するとしていた共同持ち株会社設立検討の方向性について2月中旬に延期されていた。
日産広報担当の永井志朗氏は当社から発表したものではないとした上で、統合準備委員会でさまざまな議論を進めている段階であり、2月中旬をめどに方向性を定めて発表する予定と述べた。ホンダ広報担当の中村圭太郎氏も同様のコメントを示した上で、2月中旬には方向性を発表できるように進めていきたいとした。
報道を受けて日産株は同日の東京市場の取引で続伸、一時前日比7.4%高の436.8円と昨年12月25日以来の日中上昇率となった。ホンダ株も大幅続伸となり同4.2%高の1445円まで買われた。日産の米国預託証券(ADR)は日本時間5日の取引で前日比大幅高で取引されていたが一連の報道を受けて下落に転じ、一時前日比4.8%安まで売られていた。
日産の内田誠社長は12月の会見で、両社の関係について「どちらが上、どちらが下ではなく、ともに未来を切りひらく仲間」と表現していた。対等の精神を前提としていたこれまでの枠組みを超えてホンダが日産の子会社化を提案し、2月中旬の期限を前に日産の取締役会が同提案を正式に拒絶する意思を示すことで、共同持ち株会社の計画自体が破談になる可能性も出てきた。日産にはホンダの案に賛成する幹部もおり、5日の取締役会でどのような結論が出るかは流動的だ。
ブルームバーグ・インテリジェンスの吉田達生アナリストは取材に対して、仮に子会社化案を日産が拒否すれば経営統合検討そのものがとん挫する可能性があり、その場合、日産の悪い経営状況への投資家や市場の懸念が再燃するだろうとコメント。資本の変化を伴わず、実務ベースでシナジーを追求することはある程度可能でその場合は、日産への懸念の再燃は回避できないまでも一定程度は抑制することになるとの見方を示した。
共同持ち株会社計画について会見で説明するホンダの三部社長(右)と日産の内田社長(都内、2024年12月23日)
ホンダと日産自動車が経営統合の協議を打ち切る可能性が浮上していることが分かったと、朝日新聞は5日未明に複数の関係者を引用して報道。両社は近く取締役会を開き、統合協議の打ち切りなどについて協議するとしていた。
東海東京インテリジェンス・ラボの杉浦誠司シニアアナリストは両社の株価の動きについて、市場がホンダによる株式公開買い付け(TOB)に判断が傾いてきていることを示唆しているとの見方を示した。共同持ち株会社設立の検討がうまくいかず、その代替案として完全子会社化の公算が高まれば株価はさらに上昇する可能性があるとした。また、ホンダとの計画が完全にとん挫した場合は、日産に一時関心を示していた台湾の鴻海精密工業による買収期待が高まる可能性もあるとした。
みずほ証券の聲高健吾クレジットアナリストは5日付のリポートで、両社が最終合意に至らない可能性について当初4-5割程度と想定し、実現性をやや慎重にみていたが足元の一連の報道で7割程度に高まった印象と指摘。両社による正式発表を待ちたいとした。
その上で、仮に破談の報道が事実であれば、両社の信用力評価は統合を織り込まない単独ベースで行う必要があると説明。ホンダの社債やクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)にはタイトニング圧力が強まると考える一方、日産の格付けはホンダとの共同持ち株会社設置による信用力への潜在的なポジティブ影響がなければ現時点で格下げされても「違和感のない状況」とみているとした。
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*日産:ホンダとの共同持ち株会社検討の方向性発表、2月中旬に延期